大学の「多摩フェスティバル」が去る、11月の第一週の週末に行われました。約3000人もの多くの方々が秋の花の咲き誇る美しいキャンパスを訪れてくださいました。
大学での日ごろの勉学の研究成果と国の内外での体験学習(FS/CSL)の展示やビデオ・プレゼンテーション、バザー、そして屋台のレストランで様々な味を楽しまれた方々が多かったようです。また、教員や学生の皆さん方による音楽コンサートも大好評でした。オルガン、ハンドベル、ジャズ、弾き語りのフォーク・ミュージック、オカリナなどに耳を傾けて聞き入るなど盛りだくさんの秋のフェスティバルのひと時を、お友だち、ご家族の皆さん、多摩の地元の市民の方々と一緒に楽しめたのは大変に嬉しいことでした。
今年で8回目を迎えた大学院主催の国際シンポジウムも熱心な参加者で盛り上がりました。「アジアにおける多文化共生と平和のための市民社会の役割」のテーマでバングラデシュ、フィリピン、ネパール、インドネシア、韓国、と第一線でNGO活動などをしておられる大学教授、神父、ジャーナリスト、草の根の活動家が参加され、アジアにおける多様な価値観の中で若い世代に共有される人権意識と変革への行動力の地域社会における事例が示され、大きなインパクトが与えられました。
このシンポジウムの討議に参加しつつ、現在のわたくしたちにとっての緊急の課題の一つとしての「教育基本法」の改正問題について深く考えさせられました。それは、第二次大戦後の平和憲法の精神に則った新しい民主主義的な教育への「決意を示した」教育基本法の精神が失われることへの大きな危惧があるからです。
私たちの恵泉女学園の創設者・河井道先生は、戦後の日本における教育の大きな改革の担い手として「教育基本法」の策定にあたり、教育刷新委員会・第一特別委員会のたった一人の女性委員として尽力しました。その委員会で、河井先生は次のように発言されておられます。「やはり新憲法と読みあわせまして、初めに私は平和ということを出していただきたいと思います」。
今、この個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期し、普遍的で個性豊かな文化の創造をめざす「教育基本法」の条項が、大きく変えられようとする重大な危機に直面しています。私は、教育基本法改正に反対する恵泉女学園大学教職員有志を代表し、石井摩耶子・前学長、及び湊晶子・東京女子大学学長などの先生方とともに先週11月14日に永田町の衆議院議員会館で共同記者会見を行い、改正反対を訴えました。全国の22の大学の519人が改正反対の署名をしましたが、16日午後には衆議院本会議で野党議員の欠席のまま改正案が採決されました。更に一層の審議の必要性があるのに、それが全く無視されたのは本当に残念なことです。
平和と人権と国際正義をまもるための現代日本社会の根幹にある教育基本法が改正されることにより、世界、アジア、日本の多くの人々のいのちの犠牲の上にたった「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(憲法97条)である基本的人権が脅かされることのないようにと心から願いつつ、真の平和教育の実践をめざして河井道先生の後に従って行く決意を新たにしたいと思います。