恵泉女学園大学

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本学について

2008年5月

大学開学20周年記念礼拝式辞「新しい船出」

大学が開学20周年を迎え、今日ここに記念の礼拝を持ち得ますことは本当に嬉しいことです。このチャペルにおきまして、一同そろって神に心からなる感謝を捧げたいと思います。
今日、このチャペルに入ってこられた時に、皆さんは上に高くそそり立つ鐘楼の十字架とその下の葡萄の房のようにも見える、カリヨンのベルを御覧になられたでしょうか?
皆さん方もそれぞれの見方がおありかと思いますが、私のイメージでは、鐘楼の上に立つ十字架が、まるで船のマストのようで、その下にあるカリヨンのベルはあたかも船体であるかのように見えるのです。
私たちの大学が開学20年を迎え、これからの希望ある未来への新しい船出にふさわしい船のイメージが与えられたように思います。
恵泉女学園名誉教授故・河合ハナ先生の御遺贈により、大学のチャペルに、長年の念願でありましたこのカリヨンのベルが備えられましたことは大変に有り難く、深く感謝したいと思います。
実は、この、「十字架の帆柱を持つ船」のイメージによるデザインは、全世界的な教会一致運動を展開してきた、世界教会協議会 World Council of Churchesというスイスのジュネーブにあるエキュメニカルなキリスト教組織のシンボルマークにもなっております。WCCの公式文書の表紙やインターネットのホーム・ぺ-ジにも使われています。
私たちの恵泉女学園創立者・河井道先生は、エキュメニカル運動の一端を担った、世界学生キリスト者連盟 World Student Christian Federation(WSCF)で国際的に大活躍をされ、議長団の一人として、まだ飛行機の便が無い頃に船や列車を乗り継いで世界諸国のStudent Christian Movement(SCM)を訪問され素晴らしいリーダーシップを発揮されました。
河井先生は、丁度今から101年も前の1907年に、日本で最初に開催された国際会議であるWSCFの東京大会に参加されました。そこで、この会議の主催者であるジョン・R.モット博士に初めて会われ、その後の親しい交わりの中で河井先生は、モット博士のエキュメニカルなリーダーシップと平和思想に大きな影響を受けました。モット博士は、1946年にノーベル平和賞を受賞され、1949年10回目の来日の折には、河井先生との旧交を暖めるために恵泉にもこられました。
河井先生の1900年代前半から50年代にかけてのYWCAでのお働きを含め国の内外でのエキュメニカルなリーダーシップとその活動の影響力の広さと深さに今も教えられつつあります。
今から10年前にジュネーブのWCC出版局から刊行された「真理の追究と奉仕 - WSCFの最初の百年」と題する本には、次のように書いてあります。
「ミチ・カワイは1910年以降、日本の有能なリーダーとしてのみならず、ヨーロッパや北アメリカの学生たちにとっても、また力強い福音の使者であった」
このように河井先生のSpiritとそのお働きが、100年を経てもエキュメにカルな文書の中で生き生きと表現されてあり、大変に感動しました。
さて、私たちにはかり知ることのできない神の御計画により、開学20年の素晴らしいタイミングに合わせたかのように、昨年、私たちの多摩キャンパスに隣接する旧・都立南野高校跡地を、学園が取得したのは、大きな喜びであります。
21世紀の新しい恵泉女学園大学における教育と研究、そして地域社会への貢献など、更に一層の展開を目指し、恵泉教育の良き伝統を継承しつつ希望ある未来に向けて、私たちは大きな夢を描きはじめようとしているところであります。
恵泉の伝統の継承の一つの具体的な現れということで、今日のスプリングフェステイバルにおいては、園芸科のプレーデーにおいて長年にわたりで行われてきた「メイ・ポール・ダンス」のパーフォーマンスが同窓会の短大園芸科卒業生や現在の教職員、学生有志の皆さん方により、多摩のキャンパスで初めて行われる事になったのは大変に意義深いことです。
その練習は、かなりヘビーだったようですが、先週のリハーサルは大変にダイナミックで素晴らしいパーフォーマンスでありました。
今日の「メイ・ポール・ダンス」は、大学20周年記念に大変にふさわしく、私たち恵泉の一同にとって本当に嬉しいことであります。
今年20年を迎えた大学にある私たち一同がこれからの歩みの中で、『平和をめざす女性の大学』としての特色ある大学教育とその社会的責任を実現していく使命を担いつつ、河井先生のキリストにあっての大きな夢と希望を着実に展開していきたいと思います。
さきほど、お読み頂いた聖書のみことば(新約聖書・マタイによる福音書 8章23~27節)にありますように、主イエスキリストは私たちとともにおられるのです。ですから、嵐も波も大風もおそれることなく、確固とした信仰に基づいて、エキュメニカルな十字架と船のイメージとも見えるカリヨンからの美しい響きにのせて、今日から私たちの新しい船出をしようではありませんか。
今日の礼拝で、終わりに歌う讃美歌は、河井先生の愛誦の賛美歌でありました。讃美歌21でのその新しい訳では、まさに私たちの今日の船出にふさわしく「み神の風うけ 今日、帆を上げ」という歌詞になっています。さあともに、声高らかに、20年を祝って、み神の風うけ、今日、帆を上げましょう。
そして、逆らう風にも大波にも、見守り信じてともに進み行こうではありませんか。み声に従い、大胆に沖へと、希望の未来へと出て行こうではありませんか。