恵泉女学園大学

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本学について

2009年4月

「信仰と希望と愛」

新入生の皆さん、入学、本当におめでとうございます。
そして、ご家族の方々、保証人の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
私たち、恵泉女学園大学の教職員一同は、今日晴れの入学式を迎えた皆さんを、心から歓迎します。そして、今日からはじまる4年間、皆さんが充実した大学生活を送れるように、私たち教職員は全力を尽くします。
今日は、みなさんにぜひ覚えて頂きたい人の名前があります。その人の名前は河井道といいます。この河井道先生が、実は私たちの大学の母体である、恵泉女学園を、今から80年前に創立なさったのでした。
今から80年前の日本というのは、現在の国際的な金融恐慌と、よく似た世界経済大恐慌のただ中でした。多くの人々が、仕事も財産も失い、世界的な経済の大不況は4年近くも続いたのでした。
このような時代の中で、河井道先生は、外国のキリスト教ミッションの援助もなく、特別の財政的スポンサーもなく、土地も校舎もなく、しかも経済的危機の真只中で新しい学校をつくるのは、絶対に無理だ、という多くの友人や知人たちの反対を受けたのでした。
それにもかかわらず、河井先生は、たった9人の生徒で、「聖書」「国際」「園芸」の3つを統合した教育理念を持つ恵泉教育をはじめられたのでした。
このように、私たちの恵泉女学園大学は、その教育理念の伝統を受け継ぎ、世界でたった一つの極めて特色ある恵泉教育を大学開学以来21年にわたって行ってきました。
このような聖書、国際、園芸の必修カリキュラムを人間形成の基盤としている大学は世界中で恵泉だけです。
特に、私たちにとって嬉しかったのは、このようなユニークな教育が積極的に評価されて、2006年度は「体験学習」をテーマに、2007年度は「生活園芸」をテーマに2年連続して、文部科学省による「特色ある大学教育支援プログラム」(略称特色GP)に他大学との激烈な競争の難関を突破して採択され、研究と教育の補助金を獲得し、国の内外での様々な研究教育活動の展開がなされてきたことでした。
いうまでもなく、教育というのは、教え育てることです。ギリシャ語ではeducareで、英語のEducationのもとになっていますが、その意味は、「引き出す」ということです。恵泉ではみなさんの才能や可能性を引き出す、正に皆さんが自分で自分の人生をデザインできるようなeducareをしています。
さて、皆さんは、今日恵泉女学園大学に入学なさったわけですが、なぜ、恵泉にいらしたのでしょうか?皆さん方の中には、もちろん恵泉こそが、自分に一番ふさわしい大学だと自分自身で積極的に選んで来た人もあるかと思います。あるいは他の大学に受け入れられなくて、たまたま恵泉にいらした方もあることでしょう。
しかし、私が今日皆さん方に申し上げたいことは、「皆さん方は、一人一人が神様によって「選ばれて」この大学に入ったということ」なのです。
クリスチャンの少ない日本社会では、この表現にはなじめない人もおられるかもしれませんが、この4年間を通して、皆さん方は、神様に愛され、選ばれているという喜びと恵みを感じていただきたいと思います。
今日ここに新入生となった多くのみなさんにとって、聖書もキリスト教も、そして礼拝や賛美歌もはじめてという方も多くおられるかと思います。私たちの学園はすべての方々に開かれた「真理の探究の場」としての大学なので、当然、信教の自由を保障しています。
一方、わたくしたちの恵泉女学園大学学則の第1条は次のように書かれています。すなわち、「本学は福音主義キリスト教の信仰に基づいて、女子に高等の教育を授け、専門の学術を教授研究し、もって真理と平和を愛し、国際的視野に立って文化の進展と社会の福祉に貢献する有為な人材を育成することを目的とする」と規定されていることには、大きな意味があります。
河井先生は、キリスト教の良い知らせである「福音」とは「弱く、罪に圧迫されている人が、神の力によって、自由で勇気あるものに変化される救いの道である。福音は、人生に信仰と希望を与える原動力であり、人生を勝利の明るい道へと導く案内者である」と語っておられます。
河井先生は、その生涯を通して、信仰の人であり、希望の人であり、愛の人でありました。
実は、私自身、少年時代に河井先生のお話を直接お伺いする機会がありました。そして、こども心にも愛の人として輝いておられた河井先生のメッセージによって大きな影響を受けたのでした。これは、私にとって本当に幸せなことであり、今から50年以上も前に亡くなられた河井先生から受けた恵みの輝き感じ、学長室に掲げてある大きなお写真を見つめつつ、co-workerとしての仕事をスタートしているのです。
さて、ただ今、宗教委員長の岩村先生にお読み頂いた聖書の箇所についてご一緒に考えてみたいと思います。この章では、愛とは何かについて、具体的に書かれてあります。
この章のまとめの言葉はとても印象的です。すなわち、「信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である」という表現です。私たちのたった一回限りの人生は、本当の信仰と希望を持ち愛の人として歩むために神と世界に向けて開かれているのです。
希望の行く手を輝かせ、信仰をかたく保ちつつ、人間として、女性として、日本人として、そして世界人として、平和のうちに、豊かに生きるためには、「愛と恵の」湧き出る「いのちの泉」の水によって渇きが癒されるようにとの願いをもって、河井先生が恵泉女学園での教育をはじめられたことを忘れないようにしましょう。
これから恵泉で学ばれる皆さんには、特に河井先生が英語で書かれた2冊の自伝である「My Lantern」や「Sliding Doors」を読んでいただきたいと思います。いずれも、その日本語訳もあります。あわせて伝記である「河井道の生涯」(岩波書店・2008年、第2刷)などをはじめ、様々な報告書や先生方のお書きになられた御著書も図書館に何冊も備えられてありますので、是非これらも読んで、恵泉の素晴らしい伝統そして研究と教育の豊かな蓄積に学び、それらを希望ある未来へと展開するために大胆に受け継いでいってください。
皆さん、この恵泉女学園大学のアカデミック・コミュニテイに大胆に入って行きましょう。そして、これから4年間、一生懸命に勉強し、様々な局面のキャンパスライフも楽しんで下さい。
油断しているとアッという間に過ぎ去るこれからの4年間、皆さん方を支えて下さっている多くの方々の期待に応えるためにも、積極的な恵泉女学園大学生活を送りましょう。
私たち教職員一同は、主イエス・キリストの恵みと愛の内にあって、「信仰と希望と愛」をもって皆さん方をお支えします。
新入生の皆さん、そして、ご家族のみなさんはじめ、多くの関係者の皆様方に対しまして、重ねて入学おめでとうございます、と心からお喜びを申し上げます。
最後に、ここにおられる全ての方々の上に、神様の御祝福とお恵みと豊かな愛とが、いつまでもありますようにと、心からお祈り申し上げます。
(2009年度・入学式式辞・要旨)

入学式
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