去る7月上旬に横浜パシフィコで日本プロテスタント宣教150周年記念大会が行われ、日本全国と世界の各地から3日間で延べ1万6000人もの参加者がありました。
私は、記念シンポジウムに招かれ、パネラーの一人として宣教150年とキリスト教学校教育への期待についてコメントし、次のように述べました。
第一に、日本のキリスト教学校教育においては、過去にそうであったように、現在も、更に未来も、神と人との「出会いを大事にするいのちの教育の喜び」を展開し続けるべきだということです。
日本のキリスト教教育の使命は、神と人とに出会い、神との平和・和解による新しいいのちに生きる人間を作り出すことにあります。その変革のための、人格教育の源こそは、聖書に示された神に由来するのです。
第二に、日本のキリスト教教育には、グローバルな視野に基づいた国際理解・平和教育が必要だということです。平和教育こそは、いのちを支える基盤です。かつて第二次世界大戦中に日本のキリスト教学校教育は軍国主義教育の抑圧のもとにありました。日本のキリスト者の一部には時流に乗った日本中心のアジア・キリスト教を構想し、アジアの諸教会に書簡を送ったりしました。
当時の日本がアジア近隣諸国に大きな惨害を引き起こしたことを思うと、今も私たちの心は痛み、悲しみに襲われます。これらの反省をもふまえ、全世界のキリスト教会、すなわちエキュメニカルな共同体の一員であることをいつも信仰によって確認しつつ、平和によるいのちの尊さを願い求めるキリスト教教育を展開しなくてはならないと思います。
第三に、日本のキリスト者が、戦後日本の平和と自由に基づいたいのちの教育を作ったのだということを正しく認識しておく必要があるということです。占領軍の押し付けではなくて、改正前の「教育基本法」の策定にはクリスチャンが大いに貢献した事実を積極的に評価すべきです。河井道も教育刷新委員会委員の一人として平和と人格の尊厳・自由に根差した旧・教育基本法を作ったのでした。これが改正されたのは真に遺憾なことでした。
「私たちは、神中心の人格形成の譲りえない基準に固執していかなくてはならない」と河井道は語りました。現在と未来の日本において、私たちは神の御導きを信じ、神中心の「譲り得ない基準」をまもりつつ、いのちを本当に大切にする教育、すなわち神の愛による平和をめざす教育を、混迷する時代の中で大胆に展開していきたいと思います。
開学21年目を迎えた私たちの大学と創立80年の恵泉女学園全体が神の御恵みと御祝福のうちに、河井道の精神を継承し、新しい時代の中で、「神との平和、国・人々との平和、環境との平和」を更にいっそう展開していくことができますように、神の御導きをともにお祈りしましょう。
「平和を実現する人々は幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる」
(マタイによる福音書 5章9節)