卒業式 式辞「あなたの光を輝かしなさい」
学長 木村利人
卒業生の皆さん、ご卒業本当におめでとうございます。
卒業生のご家族の方々、保証人の方や、今日ここにおられる関係者の皆さん方にも心からお祝いを申し上げます。
卒業生の皆さん方は、ご両親はじめ色々な方々の、深い愛と献身的なお支えにより今日の日を迎えることができたという大きな喜びを、感謝のうちにいつまでも覚えていてくださることと思います。
さて、今日ここにおられる大多数の卒業生の皆さん方は、2006年の入学式で、私の式辞を聞いたと思います。私はヨハネの黙示録の21章1節を引用して、皆さんがたが、恵泉でまさに、「新しい天と新しい地」を見ることになるでしょうと予言しました。
この予言はあたったでしょうか?恵泉で「新しい天と新しい地を見たでしょうか?如何ですか?」
人生で大事な時期の4年の間、皆さん方は、大変に熱心な先生方による指導のもとで恵泉でしか学べない科目を含め、教室や農場や図書館、そしてこのキャンパスだけでなく日本国内や世界の各地などで一生懸命に勉強しました。留学生の皆さんも含めて多くの友人たちとの様々な親しい出会いを経験し、大学でのさまざまな活動
や教育プログラムにも参加して、本当にアッと言う間に4年間が過ぎ去ったと思います。
昨日の卒業礼拝では著名な写真家である桃井和馬先生による「目の前に続くあなただけの道」と題する素晴らしい奨励があり、聖歌隊の美しい歌声とハンドベルのエレガントな音色がチャペルの中に大きく響きわたりました。午前と午後、それぞれの学部と大学院の卒業生、中国からの留学生を含めて全部で7人の皆さんがたによる「本当に恵泉で学んで良かった!」というお一人お一人の具体的なストーリーを語る真剣なまなざしと、時にとても楽しく、また感極まっての涙に溢れたお話しに大変に心を動かされました。
たしかに、一、二年生のころには悩みや迷い、不安もあった方々もおられたようでしたけれど皆さんがそれを乗り越え前向きに恵泉での「新しい天と新しい地」の中で本当に今日の日まで良く力を尽くされたと思います。皆さん方は、私たち教職員への感謝の言葉をのべられましたが、実は私たちもまた皆さん方によって多くのことを学び教えられて来ました。
少人数教育の良さを生かしながら私たち教職員は、理想的な恵泉教育の実現のために全学をあげて研修会を行うなど、日夜全力をつくして努力を積み重ねております。学園を卒業した後でも、何かお役に立てることがあれば、喜んでいたします。いつでも、未来に向けて皆さん方とともに歩んでいきたいと心から願っています。
また、同じ昨日のお昼の時間帯には、教職課程の修了書授与式も行われましたが、本当に大変な教職のための勉強をあきらめないで最後までお互いに支え合い、励まし合って頑張った皆さん方と先生方の熱意とエネルギーをまのあたりにして、希望の力がわいてきました。
恵泉女学園大学の学生と教職員からなる私たちのアカデミックコミュニティの中で、恵泉の愛と奉仕の精神はいまも力強く生きて皆さん方がそれを体験され、実践されておられることを教えられたのは大きな喜びでした。
確かに今は、国際的に国内的に、厳しい社会的、経済的状況にありますが、恵泉で学んだ皆さん方が、大胆に、堂々と、物おじせず、
自分の意見を正しく表現し、正義の実現と平和をめざして艱難に立ち向かう素養を、この4年間で養ったことを確信しました。
ただ今、お読み頂いた聖書の箇所、マタイによる福音書第5章16節を引用して、学園創立者の河井道先生は、しばしば、「あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい」と語られました。
これは、いわば恵泉女学園のモットーとなっている言葉でもあります。
これは、たしかに、本当の自分らしさ、人間らしさ、個性の輝きを人々の前で、素直に出しましょうということであるとも解釈されます。しかし、これは、出来そうで出来ません。本当の自分に他人の前で輝かせる光とは何でしょうか。人々の前で、はっきりとした自分らしさを輝かせることが出来るのでしょうか。しかもこのことにより「天の父をあがめるようになるためである」とかいてあることにも注目しましょう。
光を輝かせるのは、実は神を信ずる信仰によって可能になると河井先生は語られておられるのです。聖書のエフェソの信徒への手紙5章8節には「光の子として歩みなさい」ということばがあります。私たちのたった一回限りの人生の目的は、「イエスキリストに結ばれて」神の光の子として歩むことにあるのだと聖書は私たちに語りかけています。その「光の子として歩む」というのはどういうことを意味するのでしょうか。
日本聖書協会・訳の聖書には「あなた方は、以前には暗闇でしたが、今は主に結ばれて、光となっています。光の子として歩みなさい」と書いてある同じ箇所が、いのちのことば社・訳の聖書では次のように「あなたがたの心は以前は暗やみにおおわれていましたが、今は主からの光にあふれています。そのことを態度で示しなさい」と書かれてあるのです。神によって生かされて「光の子として歩みなさい」「光を輝かしなさい」ということは、言い換えれば、つまり「態度に示して」生きるということなのです。
今日、これから行われる恵泉の伝統の学燈ゆずりは、暗闇の中で卒業生から在学生へと光が譲られます。学燈譲りの由来はのちほど読みあげられますが、その学燈の炎の輝きが、河井先生の訳された「光よ」という詩の歌声に乗せて卒業生の皆さん方の一本一本の蝋燭の炎として大きく広がっていきます。これは暗闇の世界の中でイエスキリストの光輝く愛の炎が、それを受けた人々によって静かに、しかし大きく広がりをみせていくありさまを象徴しているのだと思います。
光そのものである神を見つめつつ、私たち自身ではなく神の輝きによってのみ輝くことの出来る「光の子」として恵泉で体験した希望と愛の心とを「態度に示して」ともに歩んでいきましょう。
皆さん方は、どんな暗闇の中にいても、どんなにに小さくても、どんなに取るに足らない自分であっても神様に愛されているのだということを、この恵泉で学んだからこそ愛の光を輝かせることができるのです。
「卒業生の皆さん、あなた方は恵泉の手紙です」と河井道先生はかって語られました。恵泉がどのような学校であるかを知りたかったら、この卒業生を見て下さい。「そういう手紙として、私は皆さんを社会に送り出します」と言われたのです。
卒業式は、英語で「コマンスメント」といいますが、これは新しく始めることを意味します。これからは社会における「新しい天と新しい地」での生活がはじまります。どうぞ、愛の恵の泉として周りを豊かに潤わせるスピリットを持った『恵泉からの愛の手紙』として皆さん方が社会で大いに活躍してくださいますよう心から願っております。
さあ、「あなたがたの光を人々の前に輝かしましょう」それを「態度に示しましょう」。皆さんご卒業おめでとうございました!