2010年度 入学式式辞
求めなさい、そうすれば与えられる
学長 木村利人
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
ご両親様はじめ、ご家族の皆様、保証人の方々など関係者の皆さんにも心からお喜びを申し上げます。
新入生の皆さん、これからの4年間、私たち恵泉女学園大学の教職員全員は、全力を尽くして皆さん方をサポートします。
いつでも、どこでも、私を含め教職員のだれにでも、積極的に声をかけ、アプローチしてください。なんでも聞いてください。
私たちの大学は少人数なので、学生の皆さんと教職員との距離が極めて近く、その意味で毎年卒業生の皆さん方からも本当に恵泉に学べて良かったとの評価を受けています。
皆さん、この学園で学ぼうと決めた以上は積極的に、教職員や仲間の皆さん方と交流を深め、ただ今、読んで頂いた聖書の御言葉にありますように「求めなさい、探しなさい、扉を叩きなさい」(という教えを実践してみて下さい。
もちろん、この聖書の個所は、キリストの真理とお祈りについての教えを示していますが、これは私たちの生き方の基本と重なっています。しかも、皆さんこの三つの態度の結果が書いてあることに注目してください。求めれば、与えられる。探せば、見つかる。門を叩けば開かれる、と書いてあるのです。
この皆さんがたのとても大事な人生の4年間の大学生活で、高校を終えられた皆さん方がこの恵泉女学園大学のコミュニティの中でどのように考え抜き、学び、体験し、大きく育つことになるのか、本当に皆さん方自身の予想を越える希望に満ちた未来が皆さんの前に大きく与えられ、見出され、開かれているのです。
「求めましょう! 探しましょう! 門を叩きましょう!」
恵泉女学園大学に入学なさった皆さんは、なぜ、恵泉に来ることを決めたのでしょうか?皆さん方の中には、もちろん恵泉こそが、自分の学びたいことがある一番ふさわしい大学だと自分自身で積極的に選んで、自己決定して来た人もあるでしょう。或いは、他の大学に受け入れられなくて、たまたま恵泉にいらした方もあるかもしれません。しかし、私が今日皆さん方に申し上げたいことは、「皆さん方は、一人一人が神様によって「選ばれて」この大学に入ったということ」なのです。
クリスチャンの少ない日本社会では、この表現にはなじめない人もおられるかもしれませんが、この4年間を通して、皆さん方は、神様に愛され、選ばれているという喜びと恵みを様々な学校行事やチャペルでの礼拝の時間に参加することによって、きっと感じていただけると、私はクリスチャンとして確信しております。
今日ここに新入生となった多くのみなさんにとって、聖書もキリスト教も、そして礼拝形式の入学式にでたり、賛美歌を歌ったりするのもはじめてという方も多くおられるでしょう。私たちの学園はすべての方々に開かれた「真理の探究の場」としての大学なので、当然、信教の自由を保障しています。
しかし、わたくしたちの恵泉女学園大学学則の第1条は次のように書かれあることも知っていてくださればと思います。すなわち、「本学は福音主義キリスト教の信仰に基づいて、女子に高等の教育を授け、専門の学術を教授研究し、もって真理と平和を愛し、国際的視野に立って文化の進展と社会の福祉に貢献する有為な人材を育成することを目的とする」と書いてあるのです。この学則には大きな意味があります。
恵泉女学園の創立者である河井道先生は、キリスト教の良い知らせを意味する「福音」とは「人生に信仰と希望を与える原動力であり、人生を勝利の明るい道へと導く」と語っておられます。
今日から恵泉に学ぶことになる皆さん方は、この私たちの学園の創立者である河井道先生とその現代に受け継がれ益々大きく展開されている建学の精神を常に思い、決して忘れないようにしましょう。
本学園が創立された今から81年前は、世界経済大恐慌の時代でした。多くの人々が職や家や財産を失いました。このような社会情勢の中で、河井先生の師であった新渡戸稲造先生をはじめ、多くの人々が反対する中で、断固として、たった9人の生徒で「聖書」「国際」「園芸」の三つの教科を統合した教育理念を持つ恵泉教育をはじめられたのでした。ナショナリズムと戦争の嵐の中で、神による平和こそが真の救いであるとの信念を貫き通しました。そしえ、戦後には日本の教育改革の担い手の一人として、真の人格形成をめざして、平和憲法に基づいた教育基本法の制定に河井先生は大きく貢献しました。
かけがえのない「いのち」が、現在ほど脅かされている時代はありません。この混迷の時代をどのように生きたら良いのでしょうか。
私たちは、聖書の教えに基づいた「神による真の平和」と「いのちの尊厳」を守り、日本国憲法と国連の世界人権宣言等により示されている「基本的人権」が真に保障される社会を作り出すための教育を推進し、社会的にも大きく評価されてきました。
そのために恵泉では「いのちのルーツとしての聖書」に学び、「いのちを支えあう国際・平和」を体験学習し、「いのちを慈しみ育てる園芸」を実践してきているのです。このような「いのち」の尊さに焦点を合わせ、聖書、国際、園芸の必修カリキュラムを人間形成の基盤としている大学は世界中で恵泉女学園大学だけです。
新入生の皆さん方には、特に河井道先生の自伝である「My Lantern」や「Sliding Doors」を、オリジナルの英語でも、また日本語訳でも結構ですので、ぜひ読んでください。また、「河井道の生涯」などをはじめ、様々な河井先生についての本も図書館には数多くありますので、これらの本も是非お読みください。
本学では、教養ゼミをはじめ、大学では極めて熱心な先生方による最新の基礎的な学問研究とその応用の講義やゼミが行われていますし、体験学習、語学研修や異文化体験を通してのユニークな学びの機会が多くあります。更に留学生や交換学生との友情の素晴らしい出会いもあることでしょう。そして、このような多様な学び合いの中で、心身共に様々な個性を持った皆さん方の才能を豊かに「引き出す」のが恵泉教育の特色なのです。
もともと、「引き出す」というのは、ギリシャ語で「エデュカーレ」つまり「エヂュケーション」という英語の「教育」という言葉の語源なのです。その恵泉教育の豊かな「エデュカーレ」、「才能を引き出す教育」の伝統を受け継ぎつつ、今日から、与えられるために、見出すために、開かれるために一生懸命に学び、ダイナミックなキャンパスライフを作り上げてください。
アッという間に過ぎ去るこれからの4年間、皆さん方を支えて下さっている多くの方々の期待に応えるためにも、聖書からの呼びかけに大胆に、積極的に答える恵泉女学園大学生活を送りましょう。
さあ、ともに真理を「求め、探し、門をたたこう」ではありませんか!