平和をめざす教育の展開
学長 木村利人
いよいよ新学期がはじまりました。
夏の間、皆さんはどのように過ごされましたか。国の内外での体験学習やサマーキャンプ、語学研修旅行などに参加した皆さん方もおられるでしょう。
様々な夏の報告がチャペル・アワーでなされるのを楽しみにしています。
わたしは、国際バイオエシックス(生命倫理)学会の世界大会がシンガポールで開催され、「バイオエシックスと文化」についての基調講演を行いました。 その導入部で、わたしは日本人のひとりとして、日本がひき起こした戦争により、アジア近隣諸国の約2千万人ものいのちの犠牲をもたらした軍国主義の犯した過ちについて、 率直に遺憾の意を表明しました。日本人としての道徳的責任を、平和な未来への創造に向けて果たすためには、過去に間違いを犯した日本の歴史を直視し、 それを忘却することなく反省し、絶えず想起することから新しく歩み始めなければならないと考えたからなのです。
日本軍によるシンガポール占領時代、言語に絶する抑圧、憲兵隊による拷問などにより約5万人ともいわれる中国系の人々をはじめ多くの住民が尊いいのちを奪われたのです。
市内には、占領下で日本軍の犠牲となった人々のための高さ68メートルの白色の慰霊碑が天に向けて高くそびえ立っていました。この慰霊碑の台座の前面には、英語に加えて中国語で「日本占領時期死難人民記念碑」(1942‐1945)と書いてありました。
わたしは、国際会議を終えてからチャンギー収容所博物館を訪れ、日本軍による占領時代の悲惨な状況の展示パネルと音声ガイドを見聞きして胸が痛み、深い悲しみに襲われ、収容所チャペルで神による執り成しと赦しを求め祈りの時を持ちました。
実は、このチャンギ―刑務所は、第二次大戦前にはイギリスの監獄、戦時中は日本軍の捕虜収容所、そして戦後には連合軍による戦争犯罪人の収容所として日本人の戦犯が収容され、有罪とされた旧日本軍人や軍属が処刑された場所です。日本の敗戦後、
各地の連合軍軍事裁判により多くのBC級戦犯が認定されました。
その中には、日本軍軍属として朝鮮半島出身者や台湾人が勤務しておられ、上官の命令に従って業務をしていたことから戦犯として処刑された方々もおられました。
このような問題点に焦点を合わせた演劇が、本学の平和文化研究所主催で来る2010年10月23日(土)に「ビンタン・ブサール(BINTANG BESAR)」と題して行われます。これは、公開講座の一環で劇団は「劇論◎三者会談」です。作・演出は武見龍磨氏、演出協力は大谷亮介氏です。
台本作成にあたり、本学で教鞭をとっておられた内海愛子先生がお書きになられた「キムはなぜ裁かれたのか」(朝日新聞出版)に想を得られたということでした。
なお、当日の終演後、内海愛子先生(本学名誉教授)、李鶴来先生(韓国人元BC級戦犯者)、高橋哲哉先生(東大大学院教授)と出演者の方々による「懇談会・トークタイム」を1時間程開催予定です。
学生の皆さん及び一般の皆様方のおいでをお待ちしております。(本学園在学生は無料、一般は前売り1000円で申し込みは10月13日まで、下記アドレス参照)
http://www.keisen.ac.jp/extension/open-class/2010autumn/others/bintang.html