多文化の中で平和に生きる
学長 木村利人
恵泉女学園の卒業生は、欧米はもちろんのこと、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカなどの諸国でも色々と活躍しています。
去る1月中旬に、大学の学生たちのために「メキシコに暮らして40年-世界に広がる音楽交流」というお話をして下さった世界的に著名なバイオリニストの黒沼ユリ子さんもそのお一人です。
日本に生まれ、小学生の頃からバイオリンの天才としての才能を発揮し、「恵泉」に学び、「桐朋」を経てチェコスロヴァキア政府招待留学生としてプラハ音楽芸術アカデミーに在学中の1960年にプラハ現代音楽コンクールで第一位になられました。
その後も国際的な演奏活動で大活躍されておられます。
丁度30年前に、メキシコに「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」を開校し、若い世代の弦楽器専門家の養成にあたり、今回はそのお弟子さんの一人であるユストゥスさんの演奏会もあって来日され、本学を訪問して下さったわけです。
学生たちは目を輝かせて黒沼さんのお話しに耳を傾け、「こんなスゴイ方が恵泉の卒業生におられるなんて!」と感動していました。
黒沼さんの同級生や同窓会の方々はじめ、かつての先生方も多摩キャンパスでの講演会においで下さり、恵泉の世代を超えた結びつきの美しさを感じました。
たとえ、言語が通じなくても音楽でコミュニーケーションできる喜びを伝えて下さった黒沼さんの異文化圏での生活体験の根底には、色々と価値観が異なっても、愛の心を持って、他者と平和のうちに生きるという本学園創立者・河井道先生のスピリットがあったのだと思いました。
さて、2011年には、「平和をめざす女性の大学」としてのわたしたちの大学は、一層の教育内容の充実をはかり、特にグローバルな視座からアジアにおける平和教育の展開のために学部・大学院ともども力を尽くしたいと願っています。
恵泉の大学院では、2008年度からタイにある平和活動NGO「Asian Muslim Network(AMAN)」と協力し合って、南タイのプリンス・オブ・ソンクラー大学(POSU)のモワッド先生、ユスフ先生を多摩キャンパスにお招きし、英語での集中講義「イスラムにおける平和」「イスラムによる女性の解放」「イスラムの豊かさと資本主義の貧しさ-平和の展望」などの講義が行なわれ学部生ともども学んでいます。
日本のキリスト教女子大学でこのようなイスラム教徒の専門家による講義がなされ、具体的な多文化共生についての対話と実践的な教育の展開がなされている例は極めてユニークなことです。来る1月下旬には、このAMANの創立20周年の創立記念式典・会議・シンポジウムが「多文化共生と世界平和」をテーマにPOSUで開催されます。
昨年末には、恵泉女学園大学大学院・連続講演会の第1回目が開催され、会場に入りきれない来場者であふれました。大学院の川島堅二教授により「『宗教の平和学』を求めて」と題する講演が行われました。
来る1月28日(金曜日)の午後6時半からは、すでにホームページで掲載してありますように、その2回目の講演会が、六本木にある「恵泉園芸センター」で開催されます。
大学院の大日向雅美先生が「子育て支援に新たな地平を~改めて「母性愛神話」からの解放とは~」と題して講演されますので、御関心のある皆様方のおいでを心からお待ち申し上げております。