夢は未来に-45年ぶりの再会の喜び
学長 木村利人
先月の学長便りでも述べましたが、一月下旬には、南タイのプリンス・オブ・ソンクラ―大学でAMAN(Asian Muslim Action Network )の創立20周年の創立記念式典・会議・シンポジウムが行なわれました。
その開会の式辞で、わたしは、今から45年前の1966年に、バンコクの大学のSCM(キリスト教学生運動)のメンバーによる約50人の男女学生たちのワークキャンプを主催し、この南タイのイスラムの青年たちと共に、
竹を組み合わせて手作りの「灌漑用小規模ダム」建設のために汗を流して働き友情を深めたという忘れられない体験の想い出について語りました。
実は、当時、わたしは世界キリスト者学生連盟(WSCF・本部はスイス)から派遣されて、タイSCM(キリスト教学生運動)の総主事の任にあり、またバンコクのチュラロンコン大学でも教えていたのです。
何と驚いたことに、この今から45年前の南タイでのワークキャンプに参加していたキャンパーの一人だったノイ・トンさんがこの会議の出席者の中におられたのです。まさに45年ぶりの感激の再会となりました。
当時、タマサート大学の学生だったノイ・トンさんは今、北タイのチェンマイに住んでいて、国際的な高齢者のボランティアグループ「International Community of Senior Volunteers」を組織して、大活躍しています。
わたしは、日本の高齢者組織である「国際長寿センター(International Longevity Center)」の理事でもあるので、大いに話が弾みました、それにしても、かつての学生がスケール大きく成長して本当に元気で退職後も重要な仕事の責任を自ら担っておられることに感銘し、お互いに今後の日本とタイ国との国際的な高齢者ボランティア協力について具体的なプランと未来への夢を語り合いました。
そして、今メールでのやりとりをしているところです。
ノイ・トンさんは、北タイから参加しましたが、このAMAN会議には、アジア諸国からのイスラム教徒だけでなくタイやインドや日本の仏教徒、フィリピンのカトリックのシスター、北タイのパヤップ大学のプロテスタント宣教師や高齢者ボランティアワーカー、インドネシアのYMCA主事などが参加しておられました。
特に、福祉や教育や感染症との取り組み、暴力、社会的不正や経済的格差・貧困・飢餓・高齢化社会の問題などそれぞれの宗派を超えてのコラボレーションについての活動報告や平和に関する宗教的対話の具体例が話し合われ情報の交換がなされ、多様なアジアの中での多文化・他宗教の共生の実情にふれ多くのことを学びました。
タイ国では住民の90%以上が仏教徒ですが、PSUのあるマレーシア国境近くのタイの三県内には人口の約5%のムスリムが居住しています。一部の住民の間には分離主義的傾向もあり、学校が焼き討ちにされたりするなど2004年以降約1200名に及ぶ犠牲者がありました。つい最近も軍の施設への攻撃があったので、今回の滞在中も警戒が極めて厳重で銃で武装したタイ国軍による街角や幹線道路の要所にある関門が目につきました。
AMAN国際会議の最終日には、「宣言」が採択されましたが、その中で「地球上のあらゆる文化の多様性がまもられなければならないこと、そして、その多様性こそが、相互に知り合い、尊敬し合い、祝福し合い、平和の内に共に生きるための根拠となること」を確信すると述べ、「南タイでのあらゆるタイプの暴力の即時停止と平和的解決への交渉の開始」をタイ政府に対しても訴えていることは注目されます。
この会議に参加して、「平和をめざす女性の大学」としてのわたしたちの恵泉女学園大学が、キリスト教精神に基いた「平和教育」を日本、アジア、そして世界において着実に展開していく責任と使命を感じました。
創立者・河井道先生の精神を受け継ぎ、私たちの一人一人がその「神による真の平和の精神」を新しい時代の中で生かしていこうではありませんか。