「女性のウェル・ビーイング」と「女性による社会変革」のために
学長 木村利人
新春のお喜びを申し上げます。
1月7日には、大学のチャペルで、新しい年の門出を感謝し、讃美と礼拝の時をもちました。午後には「恵泉フオーラム」が開催され、恵泉女学園の教職員、スタッフなど約150名が集い、激動する時代の中で恵泉女学園大学がめざす教育についての問題提起と質疑応答が行われ、忌憚のない意見が交換されました。
年のはじめにあたって、学園創立者・河井道による建学の精神をふまえ、本大学の教育理念について学園の一同が思いをめぐらし、その社会的使命と責任について深く学び合うことが出来たのは恵まれたことでした。
最後のまとめのセッションで、私は、アメリカ・ボストン大学のロバート教授が、「キリスト教の宣教-キリスト教は如何にして世界宗教となったか(2009)」という著作において、2000年に及ぶキリスト教の世界宣教の歴史を語っている中で、河井道について述べていることについてふれました。それは、同書中の、「女性のウェル・ビーイング」と「女性による社会変革」という項で、キリスト教女子教育の分野に関連して河井道の名前があげられていたからです。
すなわち、「ブリンマ-女子大学に学んだ河井道は、日本YWCAの総幹事として、また重要な女学校の校長でもあり、1930年代の卓越した国際主義者として日本のエキュメニカル(世界教会一致)運動の指導者でもありました」と書かれてあります。
河井道は、国際的スケールで、既に1900年代の前半において、エキュメニカル運動に大きく貢献し、日本の女子教育における「国際」という当時としては稀有な独創的教科により、グローバルな視点に立った教育を実践しつつ、日本の女性の「ウェル・ビーイング」と「社会変革」への力を養う女子教育を創造したのでした。
その、河井道による恵泉女学園教育は「聖書」「国際」「園芸」というユニークな三つの教科によって示され、実践されてきました。私は、それらに通底する理念を、「いのち」という言葉をキーワードとして一つに統合される意味合いにおいて新しく構築し直してみました。
すなわち、第一に「いのちのルーツ」であるイエスキリストを聖書に学ぶ教育によって知ること、第二に「いのちを支え合う」ための平和・国際協力・奉仕の体験学習をすること、第三に「いのちを慈しみ育てる」園芸・食農教育により自然・環境への責任を担う働きを学ぶことです。
神による「いのち」の喜びと、神による「真の平和」の内にあって、教職員・学生ともども、「いのち」に統合された恵泉教育の理念を更に一層深め、新しい年にも着実な歩みをして行きたいと思います。
2011年の忘れようとしても忘れられない、あの東日本大震災の大きな衝撃、悲しみ、災害、犠牲を銘記しつつ、神による慰めとお支えをお祈りし、未来への「いのち」を支え合い、豊かに生きるための様々な試みを、これからも継続的に展開していきたいと願っております。