「凡てのこと相働きて益となる」
学長 木村利人
神の導きにより恵泉女学園大学に着任し、今年度をもって計6年の任期を満了することとなりました。
私が飯田橋にある富士見町教会に通い始めた中学生のころ、本学園創立者の河井道先生はこの教会の長老をされておられ、当時にしては目立つスタイルの先生のお姿はどこにいらしても一目でわかるほどで、時折、教会員を前にお話をなされました。
その響きわたるお声と、背筋をのばして堂々と語られる態度とお話の内容には、子供ながらに尊敬の念を抱き強く印象に残りました。その時に恵泉という学校の名前も覚えました。
2006年以降、恵泉女学園大学はわたくしにとって、最適の仕事場となりました。それは、私が今までの人生で経験した「凡てのこと相働きて益となる」(ローマの信徒への手紙・8章28節)環境であったからなのです。
私を生かしているキリストの教えについて、日々の礼拝やその他の行事をとおして教職員、学生諸君と一緒に深く考え、祈り、賛美する機会に恵まれたことは大きな感謝でありました。
また、私が学生時代からワークキャンプで訪れた沖縄やフィリピン、インド、パキスタン、インドネシア、そして世界各国の大学での研究や教育のために住み込んだタイ、ベトナム、スイス、アメリカなどでの約三十年に及ぶ海外体験が、恵泉女学園大学でのワークキャンプ、フィールドスタディなどの教育と理解に大きく役立ちました。特に、2006年以降、本学の「体験学習」「生活園芸」「地域言語教育活動」などが、文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」や「学生支援事業」に採択され、研究・教育助成を受けたのは大きな喜びでした。
毎学期、クラスで学生諸君と「現代社会とキリスト教」の講義で、いのちについて焦点を合わせて、私の専門であるバイオエシックスについても学び合えたことも大きな収穫でした。
私の伴侶が恵泉の同窓生ということもあって、恵泉は私たち夫婦の「心の故郷」となりました。
河井道先生が創立された、この恵みの泉の園で、正に「凡てのこと相働きて益となる」という神のみ言葉に示された、人生の豊かな時を与えられたことを、神様に心から感謝したいと思います。
そして、在学生、同窓生、教職員、関係者のすべての方々と共に、これからも、恵泉の光をいつまでも主にあって輝かす者となりたいと祈っております。