今年のスプリング・フェスティバルは毎年に増して重い使命を帯びています。3月11日、東日本は未曾有の大地震、大津波に見舞われました。それ以後、多くのイベント、祭典が自粛休止に至る中で敢えて開催されるスプフェスはその価値あるものにしなければ許されません。
地震と津波は天災ですが、その被害を大きくしたのは、残念ながら人々の暮らし方でした。山が海に迫り、平地の狭い三陸地方で人々が海岸線近くに集中して生活するのはいた仕方がないところですが、高い防波堤を作ったから津波でも大丈夫という油断があったとも聞きます。そして、他でもない、原発の存在...。文明が天災を人災に変える、それは社会学者ルーマンの言葉ですが、大きな被害を受けた今、私たちの暮らしをもう一度省みる必要があるでしょう。
こうした311以後の状況で、いかに自然環境と共生するかという恵泉教育のテーマは今まで以上に真摯に問われるものとなりました。スプフェスではこの恵泉教育の成果を示し、より具体的に被災者への支援活動も様々に行う予定です。キリスト教センターが中心となって義援金や被災地に送る物資を募ります。
花と平和のミュージアムの一部としてオープンするオーガニック・カフェでは福島を応援する特別企画を用意していますし、古楽器を持ち寄って演奏する「国境なき楽団」企画では演奏後に楽器をきれいに磨いて東北地方にプレゼントします。
スプフェスが役に立つべきなのは被災地に対してだけではありません。普段の「恵泉らしさ」を若い学生とヤング@ハートの教職員が元気に披露できれば、余震や放射線飛散の不安でおそらく疲れを蓄積させているだろう来場者に明るい笑顔を取り戻して貰えるはず。
ちなみにもはや毎年お馴染みのケータイ川柳コンテストの公開審査会では、「マジすか?」のお題で詠まれた、思わずニヤリとしてしまうウィット溢れる作品が披露されます。ポニー乗馬コーナーもご用意いたしました。どなたでも、たとえば小さいお子様でもお連れの方と一緒に乗馬体験ができますし、餌やりふれあいコーナーは雨天でも実施の予定です。
温かい馬の体温を感じるとほっと癒されると評判です。
311は日本が国際社会の中にあることを、原発事故はひとたび何かが起きれば危険が国境を超えて及ぶ現実をもって示しました。もちろん本当の国際関係はそんな不幸なものであるべきではない。「越境する言葉と文化」講演シリーズはベストセラー『1Q84』を中国語に翻訳した施小煒氏をゲストにお迎えします。東アジアで広く読まれる村上春樹の研究発表は文化の交流が生み出した豊かな実りを示し、恵泉の「国際」の理念とも響き合うものになるでしょう
実行委員長 武田徹(人文学部教授)