恵泉ディクショナリー

ビオトープ人間環境学科

[びおとーぷ]  biotop

ビオトープとは

「ビオトープ」(もともとはドイツ語のbiotop。英語ではバイオトープbiotopeという)

たとえば小学校などで見られる「ビオトープ」では、池を作って周囲に樹木や草花が植えられている。池はトンボを呼ぶため、樹木は小鳥がとまるため、草花はチョウやハチが蜜を吸うためというように、目的とする動植物が生息しやすいように工夫して作られた環境のことをいう。

語源はギリシャ語の「bios=生物・生命」+「topos=場所」。その場所=環境に生息する動植物のまとまりを「生物群集(biological community)」という。

ビオトープと混同されやすい用語として、「生息場所(habitat))と「生態系(ecosystem)」がある。「生息場所」は特定の「種(species)」や「個体群(population)」が生息する場所であり、「ビオトープ」は特定の「生物群集」が生息する場所である。

「ビオトープ」という言葉が盛んに聞かれるようになったのは1970年代、とくに都市とその周辺における行過ぎた開発への反省のなかであった。コンクリートだらけの人工的な環境に、ただ緑の植物を植えるだけでは動植物が帰ってこないという認識が広がり、その場所の条件にふさわしい生物群集が復活できるような環境を人間の手で作り出そうという動きとなった。今日のビオトープも公園や小学校、あるいはビルの屋上などに作られることが多い。

小学校の校庭の「ビオトープ」のように、一般に規模はけして大きくはなく、動植物の生息場所として狭すぎて自然環境の保護には役立たないように感じられるかもしれない。しかし、数多くの小学校に「ビオトープ」が作られたなら、公園の緑地や個人宅の庭、あるいは生垣や並木道と結ばれて緑のネットワークができあがる。昆虫や小鳥など移動能力の大きな動物にとっては、この緑のネットワークを飛び石伝いに広がっていくことができ、広大な自然環境保護区と同じ役割をはたすことができる。

ただし、たとえば「ビオトープ」間の距離がどの程度なら移動できるかは、昆虫や小鳥の種類によってもことなり、また「ビオトープ」に植える植物はどのような種類を何種類ぐらい植えるべきかなど、今後の研究課題が数多く残されているのが現状である。

なお「ビオトープ管理士」の資格については、財団法人「日本生態系協会」のHPを参照されたい。
財団法人「日本生態系協会」(外部リンク)

2010年04月02日 筆者: 新妻昭夫  筆者プロフィール(教員紹介)

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