自分が透明人間になったら、どうだろうか? そのことを悪用すれば、はかりしれない力を手に入れることができるだろう。実は、古代ギリシアの哲学者プラトンの『国家』に、そういう不思議な力を持った指輪の話が登場する。指輪はアクセサリー、すなわち装身具の一種であり、文字通り身を飾る道具である。だが、アクセサリーを身に付ける動機は、美しくありたいという願望だけではなかったようである。アクセサリーの目的が、美以上に力を示すこともありえるのである。ワグナーの楽劇で有名な『ニーベルングの指輪』や、最近話題の作品としては『指輪物語』がそうであるように、物語の中で指輪が特別な魔力を秘めていたりするのも、同じことである。また、アクセサリーの材料となる貴金属や宝石には、紛争や戦争を引き起こす魔力さえあるのかもしれない。映画『ブラッド・ダイヤモンド』はそういう怖い一面を描いたものだ。力と美の奇妙な関係と言える。