ヨーロッパの彫刻や建築に「大理石」が多用されていたということは、皆さんもご存知だと思います。ややクリーム色がかった白色の石で、柔らかいので加工がしやすく、表面も滑らかなため昔から重宝されました。輸送が大変なことだけが難点でした。ルネサンス時代になると経済活動が盛んになり、人口が爆発的に増えました。そうなると都市では建築ラッシュがおこります。また、王侯貴族にかわって新たに台頭してきた富裕商人層は、住んでいる家や家族礼拝堂を飾りたいと思うようになります。そうなると大理石の需要が増し、価格が高騰していきました。そこで、漆喰を練り固めたものを使って代用することが徐々に広まっていきました。この技術は急速に発達し、大理石とほとんど見分けがつかないほどになります。安価な材料によっても「見栄」をはりたいという必要性が、こうして「ストゥッコ彫刻」という、ひとつの新たな技法を生んだわけです。