渡来
私の趣味の一つに窯元めぐりがある。九州の山中にある、土臭い窯元に立ち寄り、作品を紺碧の海を背景に日の光にかざすと、なんともいえない暖かさに包まれていく。いま私の白い机には、鹿児島で求めた15代・沈壽官のマグカップが置かれている。彼は、日本、韓国、さらにイタリアにも学んでいる。鋭角に象られた取手、ブルーグリーンと白のコラボレーション。伝統と現代の融合。沈壽官のルーツは朝鮮半島にある。16世紀末の秀吉の戦争、西国の大名は藩経済向上のためこぞって技術者を朝鮮半島に求めた。陶芸家たちは意に反して日本へと渡った。14代・沈壽官は家業を継ぎたくなかった。彼もまた自らの意思を押し殺した。人から人へと朝鮮の文化は、形を変え日本で花開いていったのである。白い机に置かれたマグカップ。過去と現代を超え未来へと開かれている秀逸の作品。そのなかに、朝鮮の素朴さが透けてみえるのが不思議である。