恵泉女学園大学教育農場
2012年2月28日
今年度で、人文学科の西村先生がご退職されます。1月19日には、先生の最終講義として「生活園芸Ⅰ」の授業が畑で行われました。当日は天気に恵まれ、先生のお人柄のような暖かい授業となりました。西村先生は、1988年大学開設当初から「生活園芸Ⅰ」の授業を担当されてこられ、1994年に有機農業に転換した際も先生のご理解と英断があったからと聞いています。その後、一時短大へ移動されましたが、2005年以降、再び大学で園芸が大好きな学生たちをたくさん育てて下さいました。1997年3月に発行された「園芸便り第1号」には、先生が伊勢原キャンパスへ行くことになったことが書かれています。この77号では、恵泉の園芸に長年携わって下さった先生にメッセージをお願いしたところ、春が待ち遠しくなる、改めてキャンパスの恵まれた環境に気付かされるような原稿を寄せて頂きました。
新学期が始まって間もなく、キャンパスの南に広がる小野路の雑木林では新芽の芽吹きが始まります。畑に初めてやってくる新入生は、まだ授業が始まったばかりで、回りの山の様子を見る余裕がありませんが、ちょうどその頃、山は新芽の色に覆われています。コナラ、クヌギ、ヤマザクラ、クリなど新芽の色は、白味をおびた淡い緑色や薄い黄緑色、また赤みを帯びた緑色など変化に富み、それらが入り混じって山を覆うので、山が淡い色合いの細かなパッチワークのようになります。山がそのような美しさを保つのは、ほんの1週間余りで、4月も終わりになると全体の緑色が濃くなっていきます。
お勧めの、芽吹きの色に覆われた山を一望できる場所を紹介します。大学の畑の横の道をしばらく下っていくと、やがて右手に広い畑が現れ、その向こうに隣の尾根の雑木林が視界いっぱいに広がっています。4月中旬過ぎには、その雑木林が芽吹きの色で覆われるのです。首を左から右に回して、やっと全貌を捉えることのできる素晴らしい芽吹きの色のパノラマです。年によって時期が前後しますので、見ごろを逃さないで下さい。
人間環境学科3年 角田基世
私は、園芸課外活動「恵泉やさい」で教育農場産の野菜を作って販売したり、里地里山保全活動の一環としてお米作りをしたりしています。これらの活動に参加してきて、私は「つながり」を実感しました。
作業は大変だけれど、なぜかみんな笑顔になります。「疲れた」とぼやいても、全身泥だらけになっても、終わるとすっきりした気分になるのです。何故でしょうか?外に出れば、自然が出迎えてくれます。天候に一喜一憂し、風が吹けば「気持ちいいね」と会話がうまれ、生き物を見つければ、そこに人が集まってきます。焚き火を囲んで、自分たちで作った野菜やお米を頬張り、収穫をわかち合いました。大変だけではない、様々なつながりが生まれる場。そして、それを見守ってくれる場。笑顔と笑顔をつなぐ場。
畑でも田んぼでも、つながりが生まれ、育まれます。それはとても大切で、途切れさせてはならないものだと思います。私は、この活動を通して見つけたもの、培ってきたものを、自分の所だけで終わらせたくありません。これらの活動が、私たち恵泉の学生と地域をつなぐ場にしていきたいと思っています。
日本語日本文化学科4年 齋藤梅香
私は人間環境学科の学生と思われることが多いのですが、そのくらい園芸と自分が馴染んでいることは嬉しいことです。私はもともと野菜や植物に詳しいのでもなく、自分で畑の手入れをしたこともありませんでした。けれど、恵泉にいる間に、園芸の時間は私の大学生活に欠かせないものとなりました。農場に出ると、いつも新しい発見があります。白菜の葉の隙間に虫が卵を産んでいた、なよなよしていた玉ネギの苗が引っ張っても抜けないくらいにしっかり根付いていた、一週間前には手のひらサイズだったキュウリがヘチマくらいに大きくなっていた、などなど畑には必ず変化が起きています。そんな光景に驚いたり、感心したり。初めて見るもの触るもの、園芸の時間は初体験の連続で、終わった後には我ながらちょっと得意気。「今日は良いことあったなあ」と、満足げな気持ちになっています。
今、私の部屋の窓辺には、「生活園芸Ⅱ」で持ち帰ったチューリップと苺の鉢植えがあります。決して良い生育環境ではないけれど、まるで春を呼び込むかのようにすくすく成長しています。3月に卒業しますが、恵泉の農場から持ち帰った「良いこと」を大事に育てていきたいと思います。