国際社会学科では、アジア・太平洋地域、ヨーロッパ、アメリカと三つの地域を中心に、政治、経済、社会、宗教や女性や子どもの人権問題、マイノリティや貧富の格差の問題など多様なテーマのゼミで学ぶことができます。私のゼミでは、アメリカの政治・外交をテーマとしています。今回のブログでは、2年生のゼミを紹介したいと思います。2年生のゼミなので、まずは入門的な学びとなりますが、春学期は、アメリカの国内政治、秋学期は、アメリカの対外政策を中心に研究を進めていきます。
上述したように、春学期は、アメリカの国内政治を学ぶのですが、具体的には、アメリカの建国と独立宣言や憲法の特徴、大統領制、選挙、司法の政治的役割、二大政党制とその支持層、オバマ大統領をめぐるアメリカ政治の現状、アメリカの主な政治的争点などについて、資料を読解しつつ、個人発表してもらうのがゼミの中心となります。
アメリカは比較的馴染みの深い国なので、学生の関心は多岐にわたりますが、今年の学生の特徴は、黒人で初めてアメリカ大統領になったオバマについて学びたいという学生が非常に多いことです。そこで、今年は、学生のこの関心をゼミのテーマに組み込んでみました。学生には、春学期が終了したときに、オバマが大統領になった現在のアメリカの社会と政治について、初歩的なレベルでよいので、「ある程度理解できた!」と言えるようになっていてほしいと思っています。
4月と5月のゼミでは、政治を本格的に学ぶ前に、まずは、アメリカの社会の基本的な特徴、とくにアメリカにはどのような人たちが住んでいるのか、どのような社会問題が存在するのかということについて学んでもらいました。たとえば、統計資料やオバマ大統領の著作の抜粋などをもとにレポートを書いてもらい、過去、そして現在、どのような地域からの移民がアメリカにやってきたのか、移民をめぐってどんな論争が発生しているのか、議論をしてもらいました。また、同性愛者間の結婚をめぐる論争や刑務所に収容されている人たちの中でなぜ黒人が多いのかなど、アメリカ社会の多様性とそこから発生する社会的コンフリクトについて考察してもらいました。6月以降は、本格的にアメリカの政治について発表してもらうことになります。
なお、国際社会学科では、フィールドスタディ(FS)と呼ばれる海外体験学習に参加することを推奨しています。FSとは、わかりやすく言うと、高校などで行う社会見学の海外版だと言ってもよいでしょう。机の上の勉強はもちろんのこと、国際社会の現状を自分の目で確かめることも非常に大事なことなのです。私は、今年の夏、1週間ほど、アメリカ合衆国のニューヨーク・ワシントンDCでFSを実施しますが、2年のゼミ生のうち、4名がこれに参加し、現地で移民問題や9.11テロ以降のアメリカのムスリムの現状、オバマ政権などについて学ぶ予定です。この4名は、本来のゼミだけでなく、ゼミのような形式のFSの事前学習の授業にも参加しています。彼女たちは、アメリカの社会・政治について、本や論文によってだけでなく、現地体験学習によっても、学ぼうとしているのです。このようなユニークな学習が可能な恵泉女学園大学の国際社会学科に是非関心を持っていただけたらと思っています。