タイ(パヤップ大学)に半年間留学していた学生より最後の現地レポートが届きました。 派遣留学生の声:タイ

2016年03月15日 

タイに行く前は半年の留学をとても長い期間のように思っていましたが、実際にタイで半年を過ごしてきた今はとても短く感じています。ゆっくりと時間が流れていく毎日の中で、日々新たな課題に取り組み、それに打ち込んでいるうちに毎日が過ぎていく。それが私のタイでの生活でした。

日本に帰ってきて最初に感じたのは、トイレの快適さと道路がきれいな事、そして暑くない!といったようなことでした。日本はある意味で、本当にきれいに整理されている国だと感じました。タイと日本の違いを感じつつ、何日間か過ごすうちに「日本語ばかり話していることはもったいない」とも思いました。

なぜかというと、タイにいた半年の間、まだタイ語もほとんど話せないときに日本人以外の誰かと話さなければならない場面において、英語の重要性を痛切に感じたからです。タイに留学したのだから、タイ語を話す。英語が話せなくても「タイだから」、どうにかなると考えていたのだと思います。実際にタイの公用語はタイ語なのですが、観光客が多いので英語を使う状況も多くあります。私のタイ語の発音がネイティブのものでないとわかると、タイ語から英語に変えて話しかけてくれたりする人も多くいましたし、私が暮らしていた寮は国際寮だったので英語を話す人が多く暮らしていました。

しかし最初は、英語でコミュニケーションをとることにとても苦労し、理解が出来なかったため周囲の人に頼ることが多くありました。タイ語クラスの会話も英語だったので、会話の意味を知るためにタイ語と一緒に英語も勉強しました。少しでも語学力を伸ばすために、クラスの人が話したことを真似てみるなど工夫もしました。まさかタイに留学しに来て、英語を学ぶことになるとは思いませんでした。

タイ語に加え、自主的に英語を学ぶようになってから困ったこともありました。それは、ふたつの言語が頭の中で混ざりあってしまい、タイ語と英語がひとつの同じ文の中に出てくるようになってしまったことです。それに加え、英語での会話をだんだんと楽に感じてしまい、気がつけばタイ語を話していなかったこともありました。私は英語を勉強しに来たわけではなく、せっかくタイに留学しているのだから、今はタイ語を勉強しなければ!と考え直しましたが、このような頭の整理は今後の私の課題だと思います。しかしタイに来たばかりの時に比べて、タイ語でも英語でも周りが話していることを理解できるようになっており、そこに気づいたときには達成感を感じました。

そしてタイに行って気がついたことは、タイ現地で買うタイ語の辞書は日本で買うタイ語の辞書よりも内容が正確だということです。マイナーな言語なためなのか、日本で売っているタイ語辞書にはあまり使用しない単語などが載っており、素直に辞書を信じられないこともありました。そんな私がタイ語を勉強する時に役立ったのが、タイ人のための日本語テキストで、単語などを覚える際にはとても便利でわかりやすかったです。

寮での生活は、ルームメイトの変更がたまたまなかったので、最初から最後までずっと同じルームメイトと過ごしました。最初はどんな話題でなにを話せばいいのかわからず、沈黙が続くとなにか話したほうがいいのかなぁとルームメイトに気を遣うことが多くありました。彼女と毎朝のご飯を一緒に食べることを習慣化し、お互いに時間の都合がつく時はなるべく一緒にいて、同じことをして過ごしていました。なぜかというと、タイに来て初めのうちは気づかぬうちに慣れない生活に疲れていて、休日はあまり外出しないでいたからです。ようやく生活にもルームメイトと過ごすことにも慣れ、彼女と一緒に出掛けるようになったころに話すようになりました。

ルームメイト生活は初めてのことでしたが、一緒に暮らすと相手の生活に影響されるからか自分の考え方や時間の過ごし方まで似てくる部分があり、それが印象的でした。ルームメイトとの仲は良かったと思うのですが、何度かお互いへの不満を抱えたり、注意を受けたら生活を改善したりと、小さな問題はたくさんありました。たとえば、ルームメイトが私に断りなく、彼女の信仰している宗教のお守りをドアの上に貼ったことです。彼女が仏教徒というのは知っていましたし、抵抗はありませんでしたが、やはり共同生活を送る場に個人的な宗教を持ち込むのであれば事前に話して欲しかったと、少しショックを受け戸惑いました。宗教はとてもデリケートな問題であることを実感しつつ、慣れてしまえばもう気にもならなくなりましたが、やはり最初はとても気にしました。私たちは仲良くなりすぎて、たまにお互いへの配慮が足らなかったのではないかとも思っています。

私はルームメイト生活を気持ちよく過ごすために「言いたいことは言う」と決めていましたが、やはりこちらからは言いたくないこと、言いにくいこと、言っても伝わらないことなどがありました。国は異なっていても同じアジア人と考えていたのですが、やはり違っていましたし、国籍や人種に関係なくその人自身のパーソナリティに向き合って対応していくことの難しさや楽しさを学びました。

私がこの半年間の留学生活を通して、いま一番大切だと感じていることは、自分に自信を持つことです。こう考えるきっかけとなったのは、同じ留学生クラスでタイ語を勉強していた中国人の一言からです。私たちの留学生クラスでは先生の意向で、たまに日頃の勉強方法や大切にしていることなどについて意見を交わしていました。その時に、例の中国からの留学生が「私は自信家です」と発言しました。たしかに彼女は大変な努力家であり、流ちょうな英語を話すことからクラスの中でも一目置かれていました。その時は、その発言を気にもしていなかったのですが、日本に帰国し周囲の人と話しているうちに、「私は自信家です」と言える日本人は少ないのではないだろうかと思うようになったのです。私自身を振り返ってみると、たしかにいつも自信がなく、これでは得られるチャンスも得られなくなってしまうのではないかと考えるようになりました。そして、「人からなにかを依頼された時には、できるかぎりの力を尽くしてその人の期待に応えられるように取り組むことで、自分自身の新たな一面を発見できるかもしれない」と気づき、常に自信を持って物事に取り組むことが大切であるという結論に至りました。

タイでの半年間は語学以外で学び得たことも多く、このように帰国してタイの生活を振り返りながら考えることもあれば、タイに行かなければわからないことを実際に体験もしました。タイでの経験、人生の先輩たちから教わったこと、振り返って気づいたこと、これらすべてを大切に、今後の自分の生活になるべく生かしていきたいです。その初めの一歩として、まずは常に自分に自信を持って、物事に取り組むことを実践していきたいです。