事前授業における活動先の見学から

2016年07月13日

恵泉のコミュニティ・サービス・ラーニング(CSL)は、実際の地域活動の前に「サービスラーニング方法論」という事前授業を履修します。この授業では主に、CSLの活動先がどのような場所で、実際の活動ではどのようなことをするのかを、施設の見学やゲスト講師による講義を通して学びます。また、ボランティアという立場で活動するにあたっての心構えを学び、一日ボランティア実習を行います。

5月から6月にかけての授業では、毎週のように学外の活動現場へ見学に出かけています。その中の一つ、「神蔵農園 畑塾」を今回はご紹介します。

神蔵農園を営む神蔵さんは、恵泉の園芸短大の卒業生。
小田急線鶴川駅から徒歩12分ほどの住宅地の中に神蔵さんの畑はあります。「家族に安心・安全な食べ物を食べさせたい」との思いから、神蔵さんはほぼ毎日畑に出て、様々な種類の野菜やお花、ブドウやベリー、自家用のお茶も栽培しています。

そんな神蔵さんが6年前に始めたのが、市民向けの「畑塾」という講座です。
月に2回、土曜日の午前中に「塾生」が畑に集まり、神蔵さんの指導の下、1m×2.5mの区画に約10種類もの野菜を育てて収穫します。神蔵さんご自身の畑と同じく、すべて無農薬・有機栽培です。
「塾生」は子どもからリタイアされた方まで年齢層が幅広く、家族やお友達同士、またはお一人で一つの区画で野菜を育てます。日常管理は主に神蔵さんがしてくださります。
畑塾の大きな魅力は、神蔵さんを中心とするスタッフ陣です。
スタッフは全員、恵泉(短期大学園芸生活科)の卒業生で、園芸をご専門にしているプロばかり。
神蔵さんのお人柄とスタッフの皆さんが作り出す温かい雰囲気を知ると、塾生にリピーターが多いというのもうなずけます。
その輪に、CSL活動をする学生も入れてもらいます。

さて、事前授業では神蔵さんに畑への思い、畑塾の内容や目的などをお話いただくとともに、畑を案内してもらいました。
神蔵さんは、春になると「私また一年生になれた」と嬉しくなり、毎年テーマを決めて植え付けをしているそうです。一つの野菜でもいくつもの品種を植え付け、「育てる」ことを心から楽しんでいらっしゃいます。新しいことにチャレンジしては、「失敗したら"やった!"と思おう。何で失敗したのかな?と考えることにつながるから」と常に考え、学ぶ姿勢が貫かれています。
こうした神蔵さんの言葉は、学生の心に響くメッセージになっています。学生の感想を少しご紹介します。

「今回、神蔵さんのお話を聞くことができて一番感じたことは、自分の好きなことや、やりたいなと思うことを核にして活動を楽しんでいることです。誰かのためという前提に、野菜・園芸がとても好きだから持続できるし、人に魅力を伝えられているのだなと思いました。」
「神蔵さんのお話を聞いてみると、とても幸せそうで、自然と関わること、自分で育てたものを食べるということ、そして何よりも、今あるものを大切にしているのだと感じました。便利で何でも早くできることもいいのかもしれないけれど、私は今あるものを大切にして、生活の中に農や自然があることのほうが、幸せなのではないかと思いました。」

事前授業で現場の見学に行ったときは、必ず学生に一人一つずつ質問を出してもらいます。今回も、「恵泉に入ったのはなぜ?」「畑塾を始めたきっかけは?」「畑塾を6年間続けてきたことの喜びは?」などの質問が出ました。
質問を考えながら相手の話を聞く習慣は、常に人と関わりながら活動するCSLにとって、とても重要なことです。相手の話に関心を持って気持ちも傾けることは、コミュニケーションの基本になります。こうした能力も、事前授業を通してだんだんに身について来ています。