遂に体験学習が開始し、各々の体験学習先へ散り散りになっていきました。寂しさ半分、好奇心半分の気持ちです。そんな私の体験学習先はNGO団体「エンパワー財団」に決定しました。ここは、チェンマイ市街にある性産業に従事する女性の自立・共立のためのNGO団体です。
タイでも、性売買春は違法として取り扱われているため、性産業にまつわるイメージは暗く後ろめたいものであることに、日本と変わりはありません。「エンパワー財団」は、そんなタイ社会のなかで、セックス・ワーカーの女性たちが元気に生きていくために作られたNGOなのです。
「エンパワー財団」は、売買春を根本的に無くすような活動はしていません。日本にはまだまだ珍しい活動目的だと思いますが、その信念は「女性が女性として、自分自身を生きること」「セックス・ワーカーとして生きる選択の肯定」に基づいているようです。これは、わたしにはひとつ衝撃的でした。「性産業従事者のためのNGO」なんて言うと、どうしても「性産業に従事する女性たちを、性産業から切り離す活動」のイメージが付きまといませんか?
日本では、「輝く女性」「女性の活躍」なんて言い方をされるようになって久しいです。わたしたちが女性としてどう生きていくかという選択は、常に迫られています。わたしは「エンパワー財団」で体験学習をすることで、タイの女性が女性として生きていくうえでの苦労や、活動を深く知りたいと思います。その学びは、日本やタイだけでなく、女性の生きていきづらさを解消することに繋げられるのではないかと思い、ここでの体験学習を希望しました。
「エンパワー財団」の具体的な活動内容はなにかといえば、まず、セックス・ワーカーの女の子たちへの「身体を守るための知識」の普及です。避妊具の使用法や、法律面での相談などを受け付けています。そして、今まで教育を受ける機会を逃してきた女性への基礎的教育の普及です。
上記のふたつが大きな活動にはなっていますが、スタッフメンバーの方は「ワーカーの子たちが入ってきやすい環境を作りたい」とよく言います。「家だと思ってほしい」とのことです。家族のように、日々の話を共有し、知識を分かち合うための場にしてほしいという思いのもと、「エンパワー財団」は運営されています。
さて、その「知識を分かち合う」の一端を、私も担わせてもらえるようです。わたしが担当するのは「日本語講座」。すでに何度か開講しましたが、私はこれまで日本語教育なんて一度も齧ったことの無い身です。しっちゃかめっちゃかな英語とタイ語を駆使して、一生懸命日本語を教えています。そして、わたしと同じくらい、生徒の女の子たちも真剣に受講してくれています。
「日本語」をツールに、親交を深めることは可能でしょうか?初体験が続く毎日です。