約20日間にわたる第2期体験学習が幕を閉じ、現在報告会に向けてプレゼンテーションの準備をしています。わたしは持続可能な農業ベースの自立した地域づくりをしているチェンマイ県メーター区で、新世代グループと呼ばれる若者が地域の中でどのような役割を担っているのかということに焦点をあてて研究を進めています。第2期では自分の研究テーマに沿った聞き取り調査などをおこなってきましたが、その中でも新世代グループのひとりであるメーター区の区長サックさんが歩んできたストーリーが印象に残っています。
区長さんは大学卒業後バンコクで働いていましたが、父の怪我をきっかけにメーター区に戻ってきます。いずれはまた街に出るつもりだった彼ですが数年ぶりに再会した友人と言葉を交わし、村人の取り組みに触れる中で、彼は心を動かされ有機農業を推進する地域活動に取り組むようになります。やがて地域のために懸命に働く彼の姿に感銘をうけた年長者の村人は若者を呼び戻すことに力をいれるようになります。そして年長者の働きかけによって村に戻ってきた若者と共に地域活動に取り組み始めたのが「新世代グループ」の始まりでした。区長は仲間と共に地域活動に取り組みますが、ひょんなことから区長選への誘いを受け、村人の支援を頼りに区長への道を歩むことになりました。彼は村人の意見をくみとりながら持続可能な農業をベースにした行政をおこなっていますが、3期にわたって村人に支持されていることからその活躍ぶりを伺うことができます。思いもよらないきっかけや出会いが彼の心を動かし、新たな人生へと歩みを進め、そんな彼の姿にまた周りの人々の心が動かされる。連鎖反応が起きて次々と動き始めていったメーター区と彼の話を聞く中で持続可能な社会を築く上で何よりも大事なのは「人」であることを改めて感じさせられました。
また、第2期では言語の壁にぶつかりながらも一生懸命伝えてくれる村の人たちと関わる中で、暮らしの場所も異なるけれど、わたしも彼らから「受け継ぐ」立場であることに気づかされました。わたしは何事にも消極的になりがちで、今回の調査も反省すべき点は多々あります。そして、まだ何を「受け継ぐ」か消化不良で上手く言葉にできません。ですが私も「継承者」であることを意識して、3期では彼らの姿勢に誠意をもって応えられるよう向き合っていこうと思います