9月中旬に実施する山地民の村でのホームスティに備え、IMPECT(Inter Mountain People's Education and Culture In Thailand Association)という山地民の抱えている問題を解決するため山地民によって結成された組織のオフィスを訪問し、カレン民族のプラスート先生から「タイのエスニックグループ」についてのお話を伺いました。先生はまず私たち学生から山地民に関して聞きたいこと、知りたいことを聞き、それについて答える形式で講義をしていただきました。
またタイにいる多くの民族についてパワーポイントを使い、各民族の歴史や民族衣装、どのようにして畑を使用しているかなどを簡単に説明していただきました。
2日間の講義を通して私が驚いたことは、私たちが何気なく使っている「山地民」や「山岳民族」「先住民」という言葉の背景には、様々な意図があるということでした。
タイ政府によって意図的にタイ人と区別するため使われるようになった山岳民族(チャオカオ)という言葉の背景には、約50年前の北タイでの森林伐採やケシ栽培の問題を、政府が外国からの開発援助支援を受けるため、山地民には教育がなく、焼き畑農業をして森林を破壊している、問題の源であるとし、山地民に対しての教育や開発が実施されました。政府が意図的に山地民の問題を作り出し、提示したことにより、決して良いとは言えないイメージが山地民に対する名称「山岳民族」に込められ、平地に住むタイの人たちに、山地民への差別意識や偏見をもたらしました。もともと支えあっていた北タイの民族の中でも、平地民と山地民という差別意識が、50年近くの年月をかけ、浸透していったそうです。
私たちは普段授業で聞くままに、山地民や山岳民族という言葉を使っていますが、言葉は意図があって使われているということを知り、自分がどのような言葉を使うかを慎重に考えるべきだと思いました。
また民族に伝わる物語や歌について、プラスート先生はカレン族の方なので、カレンに伝わる物語や儀式についてお話していただきました。
カレン族は比喩表現やウ・ターと呼ばれる伝統的な歌を使用して自分の気持ちを表現するそうです。理解することは難しかったですが、日本の短歌や和歌などと同じく、一つの言葉に多くの意味が込められているということがわかりました。
このような伝統があることは素晴らしいことだと思いましたが、それらを引き継いでいくことはやはり近代化が進む現代では難しいことなのだと思いました。自分たちの伝統に対し、もっと関心を持つことによって、伝統というのは続いていくのだと感じました。