講義「タイのエスニックグループ」

2018年09月03日  投稿者:国際社会学科3年 根岸幸子

8月31日、エスニックグループの教育や文化を支援するNGO団体、IMPECT(Inter Mountain Peoples' Education and Culture In Thailand Association) を訪問し、前IMPECTダイレクター、カレン民族であるプラスート先生に「タイのエスニックグループ」についてお話を伺いました。

IMPECTは、カレン族やモン族など北タイで暮らしている山地民の人々が集まり、山地民の抱える問題を解決するため活動しています。

プラスート先生は私たちにエスニックグループに対するイメージや知りたい質問を聞いた後、タイ国内で暮らすエスニックグループの歴史や近代化がもたらす影響について話をして下さりました。プラスート先生のお話を伺い、北タイで暮らすタイと異なる言語や文化習慣を持つエスニックグループの人々に対して行われたタイ同化政策と同様の措置の背景に、その当時のタイ社会における共産主義への恐れやアヘン栽培などの麻薬問題、焼畑農業による森林破壊問題が複雑に関係していたこと、それがエスニックグループの文化、生活に大きな影響を与えていったことがわかりました。

タイ政府は以前、北タイのエスニックグループをチャオカオ(Hill Tribe)と総称していました。この名称の背景には、彼らをタイ民族ではない、タイ語を話さない山に住む開発が必要な部族、アヘン栽培し麻薬問題と関係があり、焼畑農業で森林破壊を引き起こしているものというレッテルが貼られているため、北タイのエスニックグループの人々は、タイ社会から差別的・偏見的に扱われてきました。それに対してNGOやアカデミックレベルの研究者やエスニックグループの人々が中心にマイナスイメージであるチャオカオ(Hill Tribe)という総称をチャーティパン(エスニック)やチョンパオプーンムアン(先住民)、チョンパオ(民族)にするよう訴えているそうです。

またプラスート先生のお話を伺う中で特に印象的だったのは、山岳民族の英語訳「hill tribe」を例に「tribe」は部族という意味で、一般に「文明のあまり進んでいない小集団」という差別的なニュアンスで部族という言葉を使ってしまっているということでした。私たちが普段何気なく使っている言葉でも、その背景には何らかのイメージと結び付けられた歴史や意味合いがあるのです。私自身、これからさまざまな用語を使う際、その言葉の意味を考慮して使う必要があると思いました。

IMPECTの事務所前を撮影