休日の過ごし方「カレンの招魂儀礼に参加」

2022年08月22日  投稿者:IS 3年 M.M

タイに来て最初の日曜日、私たちが宿泊しているユニサーブから車で片道約2時間のカレン族の村で、年に2回行われる招魂儀礼の儀式があるというので、日帰りで連れて行ってもらい ました。北タイの山岳地帯で暮らすカレン族は精霊信仰を信仰していて、山、木々、水、農作物、森羅万象に精霊が宿り、その精霊が人に恩恵を与えたり、祟りや災厄をもたらすと考えています。そして人間が幸せで健康でいられるのは、人の身体に宿る5つの魂、人に関わる生きもの(鳥、魚、バッタ、クモなど)の31の魂とお米の魂、合計37の魂が共にあるからと信じ、様々な場面で招魂儀礼を行います。

招魂儀礼では、自分の家で飼っている鶏や豚、自分の田んぼのお米で作ったお酒やご飯を捧げていました。まずは料理の時に使う竹のおたまのようなものでコンコンとお供え物がのせてある丸い木のお膳をたたき、魂を呼びます。その後、お供え物の上に置いた50㎝ほどの綿糸を取り、糸にお供え物の食べ物とお酒を食べさせるかのようにチョンチョンと糸を食べ物とお酒につけ、魂を呼び、またどこかに行かないように、一人一人の手首に糸で巻き付けていました。

招魂儀礼に参加した皆の魂を呼び戻してくれるので、私も儀式の時に名前を聞かれ、「めぐの魂、帰って来なさい。」と唱えてもらい、手首に糸を巻いてもらいました。手首に結んで余った糸は、大人の場合は肩や腕に、そして幼い子の場合は、頭に乗せ、白髪になるまで長生きしますようにと祈ります。村の各家に行き、結んでもらうので手首が糸で沢山になりますが、手首に結んでもらった糸は3日間つけたままにし、その後は切ってもいいそうです。この招魂儀礼は、年に2回行われるので、次の招魂儀礼が行われるまで魂が身体から離れないよう、付けたままの村人もいるそうです。

今回訪問したカレン族の村は、日本とは違い村全体が家族のような温かさがあり、自分の家ではないのに皆が自由に出入りし、会話をしていたのが印象的でした。村人は、タイ語ではなくカレン語を話すので、何を話しているのかさっぱりわかりませんでしたが、暖かい空気感、開放的でゆったりとした雰囲気にずっと浸っていたいと思いました。

胸がドキドキ、ワクワクする出会いや発見で頭がまだ整理できていないのですが、その中で一番、驚き、興奮したのが、去年、2年生だった時に高橋清貴先生のゼミで「自然と共に暮らすレイジーマン」の生き方についてDVDを見て学んだ、そのレイジーマンの長老と村で会えたことです。名前はジョニさんで、一声かけると20万人動員できるほどの力を持ち山岳民族のカリスマと呼ばれ、尊敬されています。この村の村長も務めたことがあり、50歳の頃は北タイ農民ネットワークの委員長やタイ山岳民族文化協会の理事も務め、山岳民族の焼き畑農地問題に関連して政府との交渉役や、タイで発布された民主憲法の草案作りの際には、多くの学者と共に草案委員会のメンバーにも選ばれたそうです。レイジーマンなのにすごい人だなと授業で衝撃を受けた私は、まさか訪問した村で会えるとは思っていなかったので、自分が不思議な世界に入っているような気がしました。

ジョニさんの6番目の息子のスエさんは、2017年に開催された「しあわせの経済世界フォーラム」参加のために来日した際、恵泉でも高橋清貴先生の授業で話をしたそうです。またスエさん たちが自分たちの森を守るために立ち上げたコーヒーグループのコーヒーは2011年ぐらいから恵泉の春のスプリングフォーラムや秋の恵泉祭でも販売されているそうで、私も含め、恵泉の学生とカレン族の村人との縁を感じました。休日の数時間いただけなのに、頭と気持ちがゆったりする魅力と不思議な力を感じています。これからの長期タイFSで、私たちがまたどんな出会いや衝撃を受けるのか、今からとても楽しみです。

招魂儀礼

招魂儀礼のお供え物
レイジーマン、ジョニーさんの家で