タイ・チェンマイからの手紙 「長期フィールドスタディ」体験記

恵泉女学園大学では、日本や外国を理解する際に、机上の知識だけでは学び取ることのできない人間的な理解こそ必要だと考えています。恵泉女学園大学では国外現地授業として、約5ヶ月間タイで実施される長期フィールドスタディが用意されており、今も、多くの学生が現地で学んでいます。そんな様子を学生の皆さんが現地からレポートいたします。

タイのエスニック・グループ

2015年09月24日  投稿者:JL4年 (K.H)

こんにちは。今日私たちは「タイのエスニック・グループ」というテーマで、プラスート先生にお話を伺いました。プラスート先生は自身がカレン民族である出自をもって、山地民のためのNGOでお仕事をされています。 プラスート先生は、世界の近代化に揉まれてきた山地民の歴史から、各民族の今日の暮らしまでを詳しく教えてくださいました。 山地民の中でも最も大きな人口をもつカレン民族をはじめ、アカ、ヤオ、ティン、ルア、カム、ムラブリ、ラフ、モン、リスの主な10民族がタイでは暮らしています。また、この10民族以外にも中華系の民族やミィヤンマからの少数民族もおり、元からあった民族が分岐・移動をしたりするため、民俗や文化の混交は繰り返されてきました。

「近代化すること・されることが生き方のすべてでない」と仰ったプラスート先生の一言が印象的でした。今日では、自給自足の生活そのものよりも、換金作物の生産によって得られる現金収入のほうが重視される面も大きく、循環型農業を守る民族も少なくなってきました。タイ国内全土で見ても、森林区域は減少傾向にあるのが現状です。その中で、これまでも自然との共生を実践しているカレン民族の言葉は重たく響きます。「水を飲むもの、水を守るべし。大地で生きるもの、大地を守るべし」と言い伝える彼らは、古き循環型農業を守る数少ない民族のひとつでもあります。しかしその彼らの中でも、すでに近代農法に移行した村もあるというのですから、理想で「古き良き」を追い求めるだけでは循環型農業の継続は難しいのかもしれません。

ですが、タイのいいところは、プラスート先生のように、声をあげる人々やその団体に力があるところです。日本にもNGOや、その他にも社会的活動団体はありますが、日本という社会システムのうえで活動を守って行くのは困難です。タイの社会でもそれらの活動は困難であるのに、NGOなどの団体を通して意思主張が行える機会があるのはいい社会であることの証であるように感じました。

タイのエスニックグループの授業中

体験学習テーマ発表

2015年09月24日  投稿者:国際社会学科3年 清水なつみ

9月10日(木)、私たちはチェンマイにあるNGO「ISDEP ; Institute for Sustainable Development Education Promotion」を訪問しました。ISEDEPは持続可能な開発の実現を目指し、村のリーダーや若手NGO、そして政府関係者を対象に、参加型学習の学びを重要視して、村人と共に調査や分析、プログラム評価などのトレーニングを提供しています。

又、ISDEPは10月から始まる私たちの体験学習をサポートをしてくださいます。

私たちが各自、どのような体験学習テーマに興味があるか発表する前に、まずワークシートを使用してそれぞれ自己紹介を行いました。ワークシートの内容は名前や学年の他に、自分の似顔絵、好きなこと/嫌いなこと、自分の体験学習テーマ、FSでの学びを通して自分/家族/体験学習先/大学に期待していることでした。(ここだけの話、家族について記入する欄で、家族のことを思い出して目頭が熱くなりました...笑) それぞれが自己紹介を発表していく中で、ほとんどのメンバーがお化け嫌いであることが分かりました。このようにワークシートを取り入れることで、それぞれの情報が整理・分析しやすくなると教えていただきました。

その他にも、自分の行動の理由や背景を考えて分析する練習や、得た情報の意味や大切な部分とその理由を考えること、色んな学びのために色んな人と関わるが成長するためには自分自身が変わらなければならない...など、体験学習の中で情報整理や分析をする上での基本を学びました。

今回のISDEP訪問により、自分のテーマや体験学習先について再確認できた人、新たな選択肢が得られた人など様々です。メンバー各自が自分自身と向き合い、FSの中でよりよい学びが得られるように、体験学習が始まるまでにしっかり準備をしたいと思います。

それぞれが書いたワークシート

私たちの食生活

2015年09月16日  投稿者:人間環境学科3年 楢崎唯

タイ長期FSがはじまってから3週間が経ち、ようやくこちらの生活にも慣れてきました。タイに関する様々な授業やフィールドトリップなど、毎日新しい発見があり、充実した時間を過ごしています。そんな日々の中でのお楽しみといえば、食事。普段食事はその日の気分よって、学生寮の食堂で済ませるときもあれば、近くのお店に食べにいくこともあります。

お店によくある定番メニューといえばクイティアオというタイ風ヌードルやごはんの上に鶏肉をのせるガオマンガイ。タイ料理といえばグリーンカレーやトムヤムクンなど辛い料理をイメージするかもしれませんが、優しい味の料理もあるんですよ。タイ料理は基本的に味が薄目なので、調味料で好みの味付けができるのも嬉しいところ。学生寮の近くのニマンヘーミン通りはお洒落な喫茶店や美味しい料理屋が沢山あるので、新しいお店を発掘するのも楽しいです。

部屋でゆっくりしたいときは、スーパーマーケットを活用します。スーパーマーケットには東南アジアならではの果物や野菜がずらりと並んでいて、何を買おうかとついつい目移りしてしまいます。日本食も豊富で、大手メーカーのお菓子はもちろん、納豆や豆腐、お寿司もありました。街を歩くと日本食レストランを見かけることも多く、タイの人にとって日本は身近な存在であることを感じます。日々の食生活の中でも勉強になることは多いです。

けれども、やっぱり美味しいのは家庭の味!先週チェンライのパンラオ村にホームステイしたのですが、お母さんがつくるタイ料理は別格でした。滞在中に一緒につくったトムヤムプラームック(いかの辛いスープ)が美味しくて、感動してしまいました。そして何より、美味しいごはんを誰かと一緒に食べることが何よりも幸せであることと感じさせられる瞬間でした。

村のホームスティ先のお母さんが作ってくれたトムラムプラームック<イカのトムヤムスープ

カンチャナブリFTの準備授業 

2015年09月14日  投稿者:IS3年 A.W

今月末にあるカンチャナブリFTの準備授業として、デイヴィッド・ボゲット先生に泰緬鉄道について教えて頂きました。ボゲット先生は京都の大学で36年間教鞭を取っていて、日本語はもちろん関西弁も流暢にお話ししていて、びっくりしました。泰緬鉄道とは第二次世界大戦中に日本が作ったタイからミャンマー(当時のビルマ)につながる鉄道のことです。日本の植民地への物資の運搬を目的に作られたこの鉄道は、連合軍の捕虜と、当時植民地であったアジア人労働者の熾烈を極める労働と犠牲の上に作り上げられました。

戦後、捕虜たちは映画や墓地が作られましたが、名もなきアジア人労働者たちは光をあびることなく消えていきました。私は初めて泰緬鉄道のことを知りましたが、戦争の怖さと愚かさを改めて実感しました。まるで黒色のペンキで胸を塗りつぶされたような感覚でした。

歴史学が専攻の先生のお宅には歴史的に価値がある貴重なモノがたくさんコレクションされており、お話を聞いた後にみんなで感嘆の声をあげながら拝見しました。とても濃厚で充実した時間でした。

ボゲット先生のお家にお邪魔してお話を聞きました。

NGO訪問 Development Education Program for Daughters and Communities

2015年09月11日  投稿者:HE4年 安藤美季

チェンライ県で農村ホームステイを終えて、ミャンマー国境付近のメーサーにあるNGODEPDC(Development Education Program for Daughters and Communities)を訪問しました。

DEPDC は、1989年にDEPDCのダイレクターであるソムポップ先生と「少女売春をなくしたい」の著者である稲垣三千穂さんによって設立されました。設立当時の活動目的としては、児童労働や性的労働などで強制的に働かせられ、搾取されていた子どもを対象に保護・ケアを行っていました。現在では、養育者がいない、経済的、国籍がない、性的虐待などを受けた子供たちを対象に文字の読み書き、算数やライフスキルなどのノンフォーマル教育を提供しています。

午前中はタイ語、算数、英語などの科目を学び、午後のアクティビティは農業(実際に育てた作物を週2回お昼のおかずとし、持ち帰ったりしている)ハンディクラフト作りなどを行います。卒業しても地域で生活ができるようになることを目的としているので、アカデミックな勉強をするのではなく、生活に必要なライフスキルを重要視しています。子どもたちのニーズにあった教育、生きていくためのライフスキルを教えていて素晴らしいと思いました。

DEPDCのスタッフと記念写真(シャン族の子供が撮ってくれました)