タイ・チェンマイからの手紙 「長期フィールドスタディ」体験記

恵泉女学園大学では、日本や外国を理解する際に、机上の知識だけでは学び取ることのできない人間的な理解こそ必要だと考えています。恵泉女学園大学では国外現地授業として、約5ヶ月間タイで実施される長期フィールドスタディが用意されており、今も、多くの学生が現地で学んでいます。そんな様子を学生の皆さんが現地からレポートいたします。

ミラー財団訪問

2015年09月10日  投稿者:R.O(国際社会学科3年)

チェンライフィールドトリップ3日目に、ミラー財団を訪問しました。ミラー財団(The Mirror Foundation)は、「タイに住む山岳民族(山地民)の生活の質の向上と文化・伝統の継承をサポートするNGO」です(ミラー財団チェンライ事務局のパンフレットより)。1991年にタイの若者たちによって設立されました。現在では、タイ人、山地民、外国人が働いており、ボランティアや研修生も受け入れています。タイ国籍取得運動プロジェクトやフェアトレードプロジェクト、若者育成プロジェクトなどをおこなっているそうです。

今回は、恵泉の卒業生で、現在、ミラー財団で働いている伊能さくらさんから、山岳民族について教えていただきました。タイと周辺国の歴史を交えながら、問題が生まれた背景(流れ)や、そこで生まれた山岳民族へのイメージなどを学びました。伊能さんによると、山岳民族の抱える問題の要因には、タイ政府の開発政策に伴う環境の変化や、タイを含んだ世界の近代化とグローバル化が挙げられるそうです。山岳民族が抱える問題には、自分たち日本人も少なからず関わっていることを改めて感じました。

また、ミラー財団がどのような活動をおこなっているのかも教えていただきました。ミラー財団は、人を育てることに力を入れているそうです。山岳民族をサポートするだけでなく、ボランティアに参加する人たち自身も成長できる場所だと思いました。

最後に、伊能さん自身のお話も伺いました。特に印象に残ったのは、小さな感謝を普段からすることの大切さや、ポジティブに物事を捉えることで新たな発見や学びにつながることです。当たり前のことかもしれませんが、だからこそ、心掛けていきたいと思いました。

ミラー財団のボランティアルーム

チェンライ農村ホームスティ

2015年09月09日  投稿者:IS3年 M.Y 

チェンライ県にあるパンラオ村へ二泊三日ホームステイしてきました。パンラオ村に住む人々は、東北タイから北タイへ移住してきた人々であり、東北タイと比べて豊かで、農業に適しているため移住者が増え、そのため村は二つの行政村に分けられ、今では約300世帯あります。村の人々は、暖かく私たちを迎えてくれました。村に到着した日には、私たちを歓迎するための儀式が行われました。招魂儀礼の儀式は、とても独特な手法を用いるものであり、賑やかに行われました。

パンラオ村では、くじ引きにより私たちのホームステイ先が決まりました。タイに来てからの初めての個人行動となり、私は不安と緊張でいっぱいでした。村では主にホームスティ先の人と一緒に過ごし、学生の中には街へ行く人もいれば、家で子供と遊んだり、縫物をしたりする人もおり、皆、パンラオ村の生活を楽しんでいました。また、村の朝は早いため、早寝早起きでした。

私のホームステイ先の生活は、起床して、お寺へお参りに行ったり、織物の様子を見せて頂いたり、ランブータンを取りに行ったり、村で流行っているカバン作りを体験し、楽しみました。

今回のパンラオ村でのホームステイを通して、自分が生活している中での無駄なものが沢山見えました。また、何事も挑戦することが大切だと改めて気づきました。

私たちを歓迎するための招魂儀式

タイの教育

2015年09月08日  投稿者:国際社会学科3年 清水なつみ

8月27日(木)の午後の授業は、タイの教育についての講義を受けました。主な内容は、学校外教育( Non-Formal Education)と先住民に対する教育の現状と課題についてです。

講義をしてくださったのは、チェンマイ大学の教育学部で教えていた、カリフォルニア出身のケン先生と、ケン先生の教え子であり、山地民の問題解決に取り組んでいる NGO "IMPECT ;Inter Mountain Peoples Education Culture in Thailand Association"で勤めているラフ族とカチン族のハーフのキン先生です。

まず、ケン先生がフォーマル教育と比較しながらノンフォーマル教育の概念について分かり易く教えてくださいました。 フォーマル教育では学習内容が統一され、すぐに生活で実践できるような学習は少ないが、一方でノンフォーマル教育は教育の対象も学習内容も形態も非常に多様であり、その人の生活に必要なことを学ぶのが特徴であるとのことでした。

次に、キン先生が実際にある村のコミュニティスクールを例に挙げタイの山地民に合う教育について教えてくださいました。元々、学校のある村は少なく教育の機会は不平等でした。そこで、地域の人たちが子どもたちに民族の文化や村の農業などを教えるコミュニティスクールが設立しました。コミュニティスクールが運営されたことで、様々な問題の解消につながっているそうです。さらに、設立当初はNGOなどの外部機関が主体でしたが、最近では村人主体でニーズに合った運営ができているとのことでした。スムーズな運営のため、他の山地民の教育機関と協力し、教育政策提言を目指しているそうです。 今回の講義を受け、ノンフォーマル教育への関心がさらに深まりました。タイは町と村で生活様式が全く違うからこそ、ノンフォーマル教育という形態がここまで発展しているのだと感じました。そして、タイの山地民に向けた教育は試行錯誤しながらも発展し続けていること、スムーズな運営のためには政府との関係が重要であることがわかりました。 そろそろ本格的に体験学習先について考える時期です。今回の講義で学んだことを含め、興味関心の分野についてさらに深め、具体性・主体性・目的をしっかりと持って活動に取り組みたいと思います。

タイの農村社会とローカルウィズダム

2015年09月08日  投稿者:人間社会学部人間環境学科3年 楢崎唯

みんなでつくった銀細工の作品

チェンマイ市内にある北タイの文化や知恵を伝承している学校「ローカルウィズダムスクール」を訪問しました。前半は農村開発の活動に携わっているチャチャワン先生に農村社会の話をうかがいました。講義では農村社会について歴史、自然資源、生産、人間関係の4つの側面から教えていただきました。

講義を通して、タイと日本は全く異なる国のようで、実は共通点が多いことを知りました。例えばタイの精霊信仰では土や水、米など人間にとって必要なものには精霊が宿っていると考えていますが、日本も土地や山などあらゆる神様が信仰されてきたように同じような考えを持っています。

また、都市と農村の関係性、自然に対する価値観、生活様式などの近代化によって人々の考え方や暮らしが変化してきたこともタイと日本の共通点です。日本の都市で暮らす私にとって農村(地方)に抱くイメージや距離感は、タイの人にも通じる部分があるのかもしれないと思いました。

タイでも日本でもマイナスな目でみられがちな農村。しかし、チャチャワン先生は実際には農村は代々受け継がれてきた歴史や地域に根差した知恵、自然資源に富んでいて潜在力があるといいます。常に変化しつつある農村には問題点も多くあるけど、自分たちで考え暮らしをつくろうとする意識も近年高まっているそうです。そんなタイの農村社会を体験学習でより深く学んでいきたいと思いました。

後半には「ローカルウィズダムスクール」による銀細工体験(今回は銀の代わりにアルミを代用)を通して、北タイの文化を学びました。アルミの上に動物のイラストが描かれた紙をのせ、イラスト線にそって釘と金槌をつかって彫ります。職人さんのサポートをしてもらいながら黙々と彫り続け、約30分。それぞれ味のある可愛らしい作品が出来上がりました。体験終了後、職人さんの作品もみせてもらいましたが、当然ながら私たちの作品とは技量の差は歴然で、実際に体験をすることで職人さんの技術の高さに驚きました。歴史のなかで生み出された文化に触れる良い機会となりました。

北タイの文化社会

2015年08月28日  投稿者:IS3年 M.Y

北タイの文化社会を学ぶため、DHARADHEVIホテルへ行きました。そこは、昔の北タイにおける、文化や生活スタイルを目で見て、学べる場所でありました。そのホテルをデザインした、チェンマイ大学美術学部卒業生のテム先生がホテルを周りながらお話をしてくださいました。

ホテルと言っても、昔の北タイを表現しているため、敷地内には、お寺や、農村の風景を作りだした家や水田、米蔵、といった様々な工夫が施されており、北タイの文化をその敷地内だけで、体感できる空間でした。

お寺では、仏教について学び、男女の役割における違いについて触れました。また、昔の北タイの村人の家や生活スタイルからは、精霊信仰や、民具を見ながら学びました。北タイの中には、いくつもの民族がおり、どこの村の出身なのかを見分けるための一つの手法として、女性の場合は、巻きスカートの模様などで判断していたそうです。実際に皆で、民族衣装を着てみました。私が想像していたホテルと異なり、今まで見たことのないホテルの作りで、まるで昔の北タイにいるかのような気分になりました。今はないものが、このような形で残されていることが面白いと思い、貴重な体験をさせていただいたのだと感じます。

北タイの様々な民族衣装を着て、テム先生と記念撮影