2011年5月17日

<彫刻>の世界遺産 〜エローラ石窟・第16窟カイラーサナータ寺院(インド)

2011年05月17日

一体どんな人たちが集まれば、こんなこと、考え出せるのでしょう。圧倒されながら、これが人間の技であることにまっすぐ打ちのめされ、ほとんどそのまま固まってしまいました。デカンの焦げる熱風を浴び、この地に初めて立った日の自分を昨日のことのように思い出しています。もう20年以上もの時が経ちました。 外から資材を運びこみ、積み上げていく「たし算」の建物は世界中に珍しくはありません。エローラ石窟はその真逆をいきます。この地の頑強な岩山一つをまるごと掘り下げ、削り取り、「ひき算」に徹したこれは紛れもない<彫刻>です。とりわけ、第16窟カイラーサナータの激しくふきあげる表出を前にする時、人は決まって言葉も失ってしまいます。建物という相場にも、またその原理にもおさまることなく、このままで宇宙を動かす神への捧げものとして、これは人が100年もかけてプロデュースした「空間」だというのですから。

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エローラ石窟