阿部寛主演で映画化されて、漫画『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ)はますます人気である。主人公は浴場を専門とする技師ルシウスである。舞台はハドリアヌス帝時代(117~138)、ローマ市内だけで公設の大浴場が11、私設の小浴場が1000ほどあったというから、ルシウスはさぞかし忙しかったことであろう。ところが不思議なことに、ルシウスはしばしば2千年の時間を越えて現代にタイムスリップしてしまう。しかもなぜか場所は日本のさまざまな入浴施設と決まっている。日本もまた入浴文化が栄え、とりわけ温泉資源を活用している国である。ルシウスはここで実にさまざまなことを「発見」して、これをローマ帝国に戻って、ひとびとに伝える。物語の基本パターンは単純だが、二つの異なる時代と国を比較できるところが面白い。