東の方から鉄道を利用してケルンに向うと、ケルン中央駅に到着する直前、車窓いっぱいに圧倒的な迫力をもつ建築物が現れる。もしヨーロッパの大聖堂を初めて見る人なら、これは一体何か、と思うに違いない。
美しいというのとは違う。巨大である。塔は高く、ゴジラの背中のようにギザギザ、トゲトゲしている。「威容」という言葉が最も相応しいのではあるまいか。これがケルン大聖堂である。
2012年6月
「威容」とはこのこと ―塔の上に塔(ケルン大聖堂)―(ドイツ)
2012年06月25日
「高麗大蔵経」と仏教文化の交流‐八萬大蔵経の納められた伽倻山海印寺(大韓民国)
2012年06月21日
凛とした空気の中、参道が山の中腹へと続く。軽く汗ばみ始めたなと感じながら、石段を登ると海印寺に辿りついた。海印寺は新羅の名僧、義湘が802年に加耶山中腹に開いたお寺である。元曉とともに新羅仏教の双璧をなす義湘は、唐に渡り華厳宗の第二祖智儼に学び、華厳宗を朝鮮に広めた。これとは対照的に元曉は新羅に止まり、新羅をも飛び越える普遍的境地を開拓したといわれる。中国と日本に国分寺はあるが、朝鮮には国分寺の存在が不思議と見られない。仏教学者の鎌田茂雄は、義湘が建てた、海印寺、梵魚寺、華厳寺などの華厳十刹がその機能を果たしているとみている。新羅に誕生した護国仏教は高麗時代に入ると僧兵を多く輩出し、文禄・慶長の秀吉の侵略時に活躍している。
バース市街(イギリス)
2012年06月11日
阿部寛主演で映画化されて、漫画『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ)はますます人気である。主人公は浴場を専門とする技師ルシウスである。舞台はハドリアヌス帝時代(117~138)、ローマ市内だけで公設の大浴場が11、私設の小浴場が1000ほどあったというから、ルシウスはさぞかし忙しかったことであろう。ところが不思議なことに、ルシウスはしばしば2千年の時間を越えて現代にタイムスリップしてしまう。しかもなぜか場所は日本のさまざまな入浴施設と決まっている。日本もまた入浴文化が栄え、とりわけ温泉資源を活用している国である。ルシウスはここで実にさまざまなことを「発見」して、これをローマ帝国に戻って、ひとびとに伝える。物語の基本パターンは単純だが、二つの異なる時代と国を比較できるところが面白い。
中世を生きる町 ― アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群(イタリア)
2012年06月04日
中世も終盤に差し掛かった13世紀以降のヨーロッパでは、托鉢修道会と呼ばれる共同体が発展する。キリスト教精神に則って集団生活を営む修道会は古くから存在したが、13世紀に相次いで設立されたフランチェスコ会やドメニコ会などの托鉢修道会は、私有財産を所有せず、修道士たちは托鉢によって得た施しによって生活を営んだ。
イタリアにおける托鉢修道会の創出に多大な貢献をしたのがアッシジのフランチェスコ(1182-1226)である。アッシジの富裕な商人の息子として生まれたフランチェスコは、町の郊外のサン・ダミアーノ聖堂で神の声を聞き宗教生活に身を投じたという。フランチェスコは現世的な富を放棄し、仲間とともに粗末な衣服を腰で荒縄で留めただけの姿で布教活動を行った。彼らの活動は教皇インノケンティウス3世にも受け入れられ、「小さき兄弟会」、通称フランチェスコ会が設立される。