2012年11月

環大西洋奴隷貿易の世界遺産‐ケープ・コースト城塞

2012年11月26日

366年(1501-1867)にわたり、推定1250万人のアフリカ人を新世界に強制移住した環大西洋奴隷貿易はスペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、フランス、デンマーク、スウェーデン、北アメリカを含むヨーロッパ系植民者が関わり、その力関係、戦争の勝敗で主導権が移り変わった。これほど多くの国々が参与したこの負の世界遺産は、ナチスのホロコーストや広島、長崎の原爆投下のように民族根絶の執念や戦争の憎悪によって生まれたものではない。金銀を始め、砂糖やコーヒー、チョコレート、たばこ、綿花、藍など、おいしいものが食べたい、贅沢品を調達してもうけたいという欲望がその動機であった。遠くの国のもうけ話に投資するグローバルな経済活動、「抑制不能な」市場の力が安価で生産性の高い集団労働を求めた結果が悲惨な人身売買とアフリカ人の大規模な移動と離散を生んだ。

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図1

「大聖堂の時代」の幕開け シャルトル大聖堂

2012年11月21日

12世紀から14世紀、地域によっては15世紀にいたるまで西ヨーロッパで流行した芸術様式を「ゴシック美術」と呼ぶ。「ゴシック」の語は、古代の末期にローマ帝国に侵入したゴート族に由来する。しかしながら、ゴシック美術が花開いた時代は、ゴート族を始めとするゲルマン民族の大移動からは長い年月が経過しており、「ゴシック美術」と「ゴート族」の間には直接的な関係はほとんどない。

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シャルトル大聖堂西正面

「ドイツの心臓」の新たな鼓動‐ツォルフェルアイン

2012年11月14日

「ツォルフェルアイン」とは何か。日本語に訳せないことはないが、なまじ訳してしまうと却って混乱をまねくので、固有名詞と思っていただきたい。実態は炭坑である。1986年まで操業していた。それを産業遺産として博物館化し、往時の有り様を伝える施設としたのである。ただし実際の坑道に入ることはできない。この地域の炭層は深く、地下1000m以上に及ぶ。到底、一般の立ち入れるところではない。

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