アジア

平泉 ―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(日本)

2012年07月09日

岩手県南西部の平泉町中心部には、平安時代末期の寺院や遺跡群が多く残る。そのうち中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山の5件が、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」として2011年6月にユネスコの世界遺産一覧表に記載された。これは東北地方で最初の登録で、東日本大震災からの復興を後押しする効果が期待されている。

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「高麗大蔵経」と仏教文化の交流‐八萬大蔵経の納められた伽倻山海印寺(大韓民国)

2012年06月21日

凛とした空気の中、参道が山の中腹へと続く。軽く汗ばみ始めたなと感じながら、石段を登ると海印寺に辿りついた。海印寺は新羅の名僧、義湘が802年に加耶山中腹に開いたお寺である。元曉とともに新羅仏教の双璧をなす義湘は、唐に渡り華厳宗の第二祖智儼に学び、華厳宗を朝鮮に広めた。これとは対照的に元曉は新羅に止まり、新羅をも飛び越える普遍的境地を開拓したといわれる。中国と日本に国分寺はあるが、朝鮮には国分寺の存在が不思議と見られない。仏教学者の鎌田茂雄は、義湘が建てた、海印寺、梵魚寺、華厳寺などの華厳十刹がその機能を果たしているとみている。新羅に誕生した護国仏教は高麗時代に入ると僧兵を多く輩出し、文禄・慶長の秀吉の侵略時に活躍している。

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海印寺

マグロと七福神(日本)

2012年01月24日

2012年が明けて東京は築地市場、正月5日の初競りで一匹269キロのクロマグロが5,649万円という史上最高値で落札。「役者」は津軽海峡を回遊していて大間であがった。さぞ、幸せだったろうとマグロの気持ちを代弁した報道アナウンサーがいたが、「おい、本当はどうだい?」と人の胃袋におさまる前に聞いてみたかった。役者を見送った北の海の「花道」が今日は大寒の朝を迎えている。

破格の話題に関心も高かろうと制作されたTV番組であったのか、この頃に偶然にも素人が目にすることもないマグロ漁をみた。場所は竜飛崎、一本釣りするその漁師の心臓にはペース・メーカーが入っているという。自分の体重を優に超えるマグロを引き上げる壮絶な修羅場、その時だ。海に飲まれんとする釣竿をさばくその手は暴れる心の臓を鎮めんとしてまた七転八倒、ぐいと水をつかんで大飲みする姿が仁王立ち。驚いた、その漁師の口から「弁天様!」という絶叫がついて出た。

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天壇:北京の皇帝の廟壇(中華人民共和国)

2012年01月10日

現在の北京にある天壇は、明の永楽帝(えいらくてい。在位1402-24)が築いた大祀殿に始まるもので、清の乾隆帝(けんりゅうてい。在位1736-95)の治世に整備された。清末に焼失したが、現在のものは乾隆年間の様相を復元したものである。
中国では古来、天を祭祀する儀式が皇帝によって行われてきた。その位置は原則として南郊(なんこう。都の南側の郊外)で、北京の天壇も紫禁城(現在の故宮博物院)の南にある。北京の天壇は、明・清両王朝の歴代皇帝が祭天の儀を行った場所であった。永楽帝の頃には天と地を一緒に祭祀していたが、後に天壇は天のみを祭祀する場となり、地の祭祀は北郊の地壇で行うこととなった。現在の北京の安定門外にある地壇公園がそれである。

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故宮:独裁皇帝の広大な居城(中華人民共和国)

2011年09月30日

現在の世界遺産としての名称は「北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群」。1987年に北京の故宮が世界遺産に登録されたあと、2004年に瀋陽のものが登録された。この記事では主に、圧倒的に有名な前者を紹介する。

故宮とは、昔の宮殿というほどの意味。一般に知られる北京の故宮とは、明(みん)王朝(1368-1644)と清(しん)王朝(1616-1912)の宮殿であった紫禁城(しきんじょう)を指す。現在の故宮の原型は、15世紀に明の永楽帝(えいらくてい)が現在の北京に遷都して造営したもので、継いで北京を首都とした清王朝もここを皇宮として復興、以後、清王朝が滅亡する1912年まで、政治の中枢であり続けた。内部の重要な見所について、簡単に見てみよう。

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故宮