5月28日、「恵泉スプリングフェスティバル２０１６」が開催され、多くの来場者で賑わいました。自然に恵まれた多摩キャンパスは今、新緑に心洗われるようです。一年で最も美しいこの季節のキャンパスを地域の方々に広く開放して恵泉教育の一端に触れていただくことを目的として、毎年、この季節にスプリングフェスティバルを実施しています。ご近所や地域で福祉関係の活動をしていらっしゃる方々、恵泉の保護者や同窓会の皆さまの参画・協力もいただき、大学が本当にたくさんの方々に支えられていることに感謝の思いを新たにする一日です。
今年のテーマは「未来へ種を播こう！～聖書・国際・園芸という恵泉教育の豊かな土壌に、「平和」という花を咲かせるためにどんな種を播くのか。一緒にヒントを探りませんか？～」でした。
チャペルのカリヨン塔から時折、ベルの音が響き亘るキャンパスに、学生たちが春の訪れを祝って踊りながらリボンを編みあげる「メイポールダンス」を幕開けに、さまざまな企画が展開されました。恵泉ならではの有機野菜や恵泉園芸センターのお花や素敵なグッズの販売、地域の福祉団体の方々の出店等々のお楽しみコーナーにはたくさんの人だかりが出来ていました。
また学生が世界を歩いて学び・地域で活動した成果を展示発表する体験学習ＦS/CSL実施報告や学生たちの里地里山保全プロジェクト報告、さらには恵泉自慢の教育農場を肌で感じていただく農場ツアーにも多くの方が関心を示して下さったことは、学生たちにとっても大きな励みとなったことと思います。
こうした恒例企画に加えて、今年のテーマに即したメイン講演会が開催されました。
- 「人と人をつなぐ食のパワー～美味しいパリの食卓シーンから学んだこと～」
（ヘルシーフレンチ研究家 森由美子氏）」 - 「今、親や教師に何が問われているのか～大人の闇を子どもに引き負わせないために～」
（基督教独立学園高校 前校長 安積力也氏） - 「教科書で教えていない日清・日露戦争と今～東アジアにおける戦争と平和～」
（東京大学名誉教授 原朗氏Ｘ恵泉女学園大学元学長石井摩耶子氏）
いずれも私たちが何を大切にして「今」を生きるべきかを深く考えさせられる示唆に富んだ講演会でした。聴衆の皆さまが深くうなずきつつ聴き入っておられるお姿を私は会場の後ろから見ながら、平和を愛し・求め続けようとする人々の集いを恵泉の多摩キャンパスで持たせていただけたことをとても嬉しく思いました。
日々のさりげない暮らしを丁寧に紡ぐ大切さ、その一方で国や社会の行方を常に知性と強靭な精神力をもって振り返り見守る大切さの基底には、「平和」を愛し、その構築に力を尽くす教育が不可欠です。まさに恵泉の教育が今の時代になくてはならない宝であることを考えました。
最後に、もう一つ、とても素敵で勇気をいただけた企画についてのご報告です。
3.11東日本大震災から5年特別企画（恵泉女学園大学「福島を想うプロジェクト」
「夢は見るだけでなく叶えるもの」（千葉清英氏Ｘ漆原智良氏）
千葉氏は3.11でご家族7人を失いましたが、生き残った長男と千葉氏を支えたのが、バッティングセンターを創るという夢。その夢の実現のために「希望ののむヨーグルト」を企画・販売して、見事夢を実現されました。この千葉氏の実話をノンフィクション『天国に届け！ホームラン』にして出版されたのが漆原氏です。ある日突然、一瞬にして家族を失うという経験（漆原氏は第二次大戦の東京大空襲1945/3/10で）をしたお二人のトークセッションは、「夢」を持つことがいかに絶望から立ち直る大きな力となるかを、静かに、熱く語って下さいました。
このセッションには阿部裕行多摩市長もご出席くださいました。最後に千葉氏と漆原氏から「ど根性ヒマワリ６世」のタネが多摩市長と恵泉女学園大学に贈呈されました。3.11震災後の泥水にも負けずに芽を出した1本のヒマワリを大切に育てた人々の手によって、今、6世にまでなったタネです。被災した人々を励まし、心の支えとなってきたヒマワリのタネは日本国内だけでなく、アメリカ・インド・中国など世界各地に贈られているとのことです。
「今、何が必要ですか？何を贈ればよいですか？」と聞かれる時、被災地の方々は、こうお答えになると漆原氏はおっしゃっておられました。「特別なものは何も要りません。ただ忘れないでほしい！私たちのことを忘れないでいて下さい！！」。
「いつも、心に憶えている！」 自然災害に遭った方々、歴史のあやまちに命を奪われ苦難を強いられた人々、虐待や貧困、人間関係に傷つき苦しんでいる子どもや親たち...、私たちと同じ今を生きている人々のさまざまな苦しみをいつも心に憶え、祈り続ける大切さが心に沁みたスプリングフェスティバルの一日でした。
