女子学生たちの就職に力強い助っ人~東京経営者協会のご訪問~

2016年06月06日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

5月31日、東京経営者協会の方々のご訪問をいただきました。東京経営者協会は首都・東京における総合経済団体です。この団体は、多様な人材活用と産学連携による人材育成支援を推進し、グローバル人材の育成支援や女性の積極的活用に向けたシンポジウムの開催など、会員企業に多用な人材の活用を支援する活動を行っています。恵泉女学園大学は東京経営者協会の大学会員です。

今回は私の学長就任を機に恵泉女学園大学との連携を深めるために、わざわざご訪問頂き、「産学連携事業」に関して改めて確認をいたしました。

協会の「産学連携事業」とはたとえば企業の方々が大学に出向いて下さり、社会で働く意義や産業の動向、職種の理解、企業人としての経験などを話して下さる出前講座等々、盛り沢山の内容からなっています。既にキャリアセンターでも取り組んでいるものも少なくありませんが、私が特に意義深く思われたのは、「学生対象の働く現場見学会(バスツアー)」です。学生たちに現場を見学させて下さり、若手社員との懇談・交流を通じて働く意義を深めることを目的とした企画で、特にB to B企業(企業間取引:Business to Business)も数多く選ばれていることです。テレビや新聞等で広報活動を活発にしているB to C企業(Business to Consumer)に比べて、B toB企業はすばらしい実績を持っていても学生たちにとってはよく知られていないのが一般的です。恵泉女学園大学が所在している多摩地域にもそうした企業が少なくなく、学生時代に現場を体験させていただけることは大変有り難いことです。

私はこれまで「ジェンダー論」の授業で『私たちの就職手帖』を取り上げ、その活動を紹介しているDVDを一緒に見ることを恒例としてきました。1980年に早稲田大学の女子学生が創刊した日本初の「女子学生による、女子学生のための就職情報誌」です。当時は主要企業のほとんどが四年制の女子大生に門戸を閉ざしていました。「男子学生には段ボール一杯の企業案内が届くのに、私たち女子大生にはゼロ」という怒りに端を発した女子大生の動きは瞬く間に首都圏の大学生によるインターカレッジ活動へと展開し、1998年の最終号まで18年間に亘って継続された雑誌です。各企業の採用実態や働く女性の様子などをリアルに伝える一方で、就職活動に有利なメイク術のページもあったり、女子大生ならではの柔らかな視点が新鮮でした。私も仕事と家庭を両立している働く女性の先輩としてインタビューを受けた記憶がありますが、男女雇用機会均等法もなかった時代、厳しい状況に置かれているからこそ、瞳をキラキラと輝かせて社会の厚い壁に挑もうとしていた後輩たちがまぶしく見えたことでした。

授業でかつての女子大生の活動を紹介し、こうした先輩たちの努力もあって今、女性活躍の時代が到来したことを伝えていましたが、一方で果たして企業はどこまで真剣に女子学生たちの力の発掘・活用に意欲を持っていてくれるのだろうかと思うのも、正直なところでした。今回、東京経営者協会の方々の熱意溢れるご説明をうかがいながら、かつてと比べて隔世の感を憶えると同時に、女性の側の働く意欲の醸成の在り方、社会に対して自分は何ができるのか、何をなすべきかの人生設計を確かにする教育の大切さを改めて思いました。