タイ国際ワークキャンプの報告を聞いて

2016年06月12日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

この春のタイ国際ワークキャンプを終えて帰国した学生が報告のために学長室を訪ねてくれました。

このワークキャンプは31年目を数えますが、今年も無事に全行程を終えたことに安堵すると共に、報告に来た学生に心からのおめでとうの気持ちを伝えました。
毎年の報告書には随所に参加した学生の輝くばかりの笑顔がちりばめられていて、本企画がいかに充実したものかがうかがえます。引率して下さる教職員の方々のご尽力にも深い感謝と敬意を覚えます。

海外旅行が日常的になっている今日ですので、外国は多くの人にとって以前とは比べられないほど身近かなものとなっていますが、このワークキャンプはそうした一般的な海外旅行とは随分と様相を異にしています。
キャンプの行程はバンコク、チェンマイというタイ都市部での人々との触れ合いや大学間の交流、観光だけではありません。日本とはもちろんのことタイ都市部とも異なる歴史と文化を持つ山岳民族(カレン民族)の方々と触れ合い、数日間、共に暮らすことが中心となっています。他ではめったに経験することのできない貴重な時間を学生たちは毎年、積み重ねて帰国します。

報告に来てくれた学生に何が一番印象的だったかと尋ねたところ、携帯電話を使わない生活を送ったことだということでした。山岳民族の人々が携帯を用いないことはもちろんですが、そのことが一緒に行った日本人の友だちとのコミュニケーションまでも大きく変えたと言います。どんなことでも直接に触れ合い、顔と顔を合わせて気持ちを伝え、相手の気持ちもまた対面で汲み取るという人間関係が新鮮だったということでした。

 

言葉も生活習慣も文化も大きく異なる未知の世界に胸ときめかせて飛び込んでいく若い学生たちの姿を想像すると、まぶしいものがあります。どんなに活発で積極的な学生たちが参加するのだろうと思っていましたが、意外なことにその学生は当初は参加を決めるのにとても勇気が要ったと話してくれました。どちらかというと内気な自分を変えてみたいというのが参加動機だったと物静かに語るその学生のどこにそんな勇気があったのかと思われましたが、最終的に決断したのはキリスト教センターの先生方が同行して下さるから大丈夫と思ったからということでした。そうしてタイワークキャンプを終えて帰国した今、真の異文化理解を体験したことが大きな自信となっていることが感じられました。
学生時代のこうした体験は、間違いなくこれからの人生の宝となるはずです。その宝を手にできたのは、異文化への旅に思い切って飛び込んだ勇気があったから。そして、教職員が学生の安全はもとより現地での時間が豊かになるように尽力して下さるという信頼があったからでしょう。
恵泉女学園短期大学時代から大学へと、30余年に亘って続いてきたこの輝かしい企画を支えてきた学生の勇気と教職員の献身を思い、今後も末長く継続されることを心から願っております。
まもなく報告書が刊行されるとのことです。どうか刊行を楽しみになさってください。