恵泉祭 リユニオンの報告

2017年11月13日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

第30回恵泉祭がさわやかな秋晴れの下、11月4日・5日の2日間にわたって開催されました。恵泉祭は学生主体のイベントです。ゼミ発表や日頃のクラブ活動の紹介、学園祭おなじみの露店が立ち並びましたが、この2日間は大学主催の大切なイベントもたくさんありました。

その中の一つが大学初めてのリユニオンの集いと名誉教授称号記授与式でした。

ウェルカムボードウェルカムボード

恵泉女学園は、高校・短大それぞれ「卒業後25年目の卒業生」を毎年、創立記念式典に招待してきましたが、今年は大学Ⅰ期生が初めて招待される年です。そこで今年のリユニオンの集いは多摩キャンパスで行いました。短期大学(英文学科・生活園芸学科)41回卒業生とともに、70名近い卒業生がチャペルの礼拝に会した後、ラウンジで会食のひと時を持ちましたが、卒業生の胸には、本多洋子先生(「園芸芸術」担当)が一つひとつ心をこめて作ってくださったコサージュが飾られていました。
"お帰りなさい"という思いがこめられたコサージュです。

四半世紀前に多摩キャンパスで共に時を過ごした学生たち、そして、教職員です。わきあいあいと懐かしい思い出話に花が咲いて、時間の経つのもあっという間でした。40代後半となった卒業生たちの成長した姿を見つめるかつての先生方の中には70代から80代の方々も。愛おしい娘の里帰りを迎えたような喜びに充ちたひと時でした。

今年の恵泉祭礼拝での私の奨励も、リユニオンの会に集った卒業生に向けたメッセージとなりました。

恵泉祭礼拝での奨励「娘たちへ」

皆様、恵泉祭礼拝にようこそいらしてくださいました。
恵泉祭も今年で30回目を迎えます。
今年はとりわけ心躍る思いで、今日の日を迎えました。
大学としてはじめてのリユニオンの集いの日です。短大英文学科41期生、園芸生活学科41期生、そして、大学Ⅰ期生の皆様、お帰りなさい。皆様のこと、心からお待ちしておりました。

本日は、歴代の学長はじめ、このキャンパスで学生の指導・大学運営にお力をお尽くしくださいました先生方、そして、同窓会の方々もたくさんいらしてくださいました。お忙しい中、本当に有難うございます。

この嬉しい日に、本部からも理事長・学園長、中高校長にもご臨席いただきまして、皆様と共に礼拝のひと時を持たせていただくことに、心からの感謝をこめて、お話をさせていただきます。
タイトルは「娘たちへ」です。

このキャンパスで学び、共に時を過ごす学生は、私たち教職員にとって、娘です。私は開学当初から恵泉に務めております。当初の学生とは、少し年の離れた姉と妹のような関係でしたが、今は祖母に見られているようです。

こうして年齢を重ねておりますが、私が恵泉の学生を思う気持ちは、いつも変わらず、娘を思う気持ちです。それは、若い命を慈しみ育む心であると同時に、いえ、それ以上に、若い人々の自ら育つ力への敬意と感謝の思いです。若い命は育つ力に満ち溢れている、自ら育つ喜びをたたえてくれている、今年の恵泉祭のテーマを聞いたときに、まず、思ったことです。

「恵風光彩」、学生たちが考えたテーマです。
「恵風」とは万物を成長させる恵みの風という意味です。
"恵泉での学びを通して自分を変えられた"
"いろいろなことにチャレンジできて、新たな自分を発見できた"と、
自身を見つめ、その成長をかみしめる言葉を学生たちは常々、このチャペルの感話で語っています。まさにその思いを表した「恵風」。
そうして、学生一人ひとりが、きらきらと輝き、自然豊かなこの多摩キャンパスにさらに華を添えている姿が「光彩」です。

私たち教職員にとって、こうした言葉を選び、この言葉を掲げて学園祭を開催する学生と共に時を過ごせる喜びに勝るものはないと言っても過言ではありません。

私が大切にしている絵本があります。アリスン・マギー作「ちいさなあなたへ」。原題はSOME DAYです。
"あのひ わたしは あなたの ちいさな ゆびを かぞえ そのいっぽん いっぽんに キスをした"という言葉から始まります。
娘を授かった母の喜びの言葉です。

わが子を胸に抱く至福に包まれている母。その母を全身で慕い寄る幼いわが子。やがて、その子が成長し、思春期を迎え、成人し、巣だっていく姿を見送る母の安らぎと幸福感に満ちた絵本です。

今日、ここに集ってくださっている先生方、先輩諸姉の皆様も、同じ思いで、かつての恵泉生たちが立派に成長した姿に目を細め、また、在学生の活動をご覧いただけるのではないかと思います。

「ちいさなあなたへ」の絵本は、最後に次のような言葉で結ばれています。
"わたしの いとしいこ そのときはどうか わたしのことを おもいだして"。
これからの長い人生を、哀しみも試練も、そして多くの喜びを味わいながら生きていくことであろう娘を想って向けた言葉です。

恵泉女学園大学は私が学長に就任した昨年度から、「生涯就業力」の育成を掲げて、全教職員一丸となって改革に力を注いでおります。

女性の人生は長く、変化に富んでいます。
生涯にわたって、なにがあっても、どんな時でも生きる目標を見失わずに自分を磨き続け、身近な人に尽くし、社会のために生きることに喜びを見いだせる女性となってほしい。
女性としてしなやかに、強(したた)かに生きる力を在学中に磨いてほしい。
そして、その力を卒業後も磨き続けるための支えとなりたい。
それが女性の高等教育機関である女子大の使命であり、なによりも恵泉教育の誇りをかけた挑戦です。
河井先生は常々、学生たちにこう言われました。
「開拓者として道を明るく照らせる女性におなりなさい。まっすぐな狭い道、人が踏みならした道を行くことに満足してはならない。いかなる所にあっても、なくてはならぬ者として喜ばれる方におなりなさい」。この河井先生のお言葉を大切に、そして、大学開学以来、諸先生方と共に築き積み上げてきた恵泉教育の歴史を結集する思いをこめた「生涯就業力」の育成です。

「恵風」が多摩キャンパスの隅々に、そして、訪れてくださる方々に、やさしくさわやかに吹き渡るこの日、先ほど、ご紹介した「ちいさなあなたへ」の最後の言葉と同じ言葉を、ここに集ってくださった卒業生、在学生の皆様に贈りたいと思います。
"わたしたちの いとしい むすめたち いつも そして なにかあったら 恵泉をおもいだして"

「汝の光を輝かせ」と言われた河井道先生のランターンを、大学はこの多摩に灯し続け、在学生の学びを支え、卒業生を想い続けております。