恵泉祭・リユニオンの集いの報告
2018年11月19日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
11月4日、2018年度の恵泉祭が開催されました。あいにくの雨模様の一日でしたが、大勢の方が多摩キャンパスにいらしてくださり、学生たちの活動を温かく見守ってくださいました。有難うございました。
また、同日、名誉教授称号記の授与式を行いました。今年の名誉教授は杉山恵子先生(アメリカの歴史)と李省展先生(東アジアの歴史と文化)です。長年にわたる功績に深く感謝をして、名誉教授称号記を授与させていただきました。
それに続いて、多摩キャンパスで2回目となるリユニオンの集いが行われました。久しぶりの母校を訪れた卒業生たちと懐かしいひと時を過ごせたことは本当に嬉しいことでした。
リユニオンの模様について、実行委員会からの報告をご紹介させていただきます。
今年の恵泉祭での「卒業後25年リユニオンin 多摩」は、1993年3月に卒業した短期大学(英文学科・園芸生活学科)42回、大学2回(英米文化学科・日本文化学科)の卒業生の皆さんを多摩キャンパスにお迎えしました。
当日は卒業生43名、元・現教職員・名誉教授を含む学園関係者38名が集まり、外の小雨模様などどこ吹く風で、明るく華やかなひとときとなりました。
チャペルでの礼拝、名誉教授称号記授与式、記念撮影を経て、会食会。会食会は場所を移し、岩佐玲子先生の司会のもと、中山洋司学園長のウェルカムメッセージ、大山綱夫先生(現北星学園理事長・恵泉女学園短期大学名誉教授)の食前感謝祈祷と近況報告でスタート。会の半ばで先生方、卒業生たちからのスピーチの時間をとりました。
先生方からのスピーチは、𠮷川俊子先生、小林幹夫先生、石井摩耶子先生にお願いいたしました。先生たちが変わらぬ力強さ、あたたかさで語りかけくださる姿には、卒業生たちも胸を熱くさせられたことと思います。
卒業生からのスピーチは4名――国際線のフライト帰り翌日に駆けつけてくださった鈴木里佳さん(短大英文)、今も変わらず伊勢原で生活をされている横溝京子さん(短大園芸生活)、今秋発行された卒業生紹介パンフレット「しなやかに凛として生きる」制作にご尽力いただいた梅野陽子さん(大学英米)、現在東洋大学で専任講師を務めていて同期の情報もご紹介くださった伊藤美佳さん(大学日本文化)にお願いいたしました。再会のうれしさと喜びをわかちあえるお話の数々でした。
参加された皆さんが、25年を経て再びつながることができて喜んでいる姿や、笑顔でお帰りになる様子、「開催してくださってありがとう」「来てよかった」などと声をかけてくださったこと、実行委員会にとってはすべての疲れが癒される素敵なごほうびでした。
また、ボランティア学生スタッフ3名のこまやかな働きぶりにも感謝です。
来年もまた、在学生たちとともに、卒業生の皆さんをお迎えするのを楽しみにしています。
卒業後25年リユニオンin 多摩実行委員会
なお、恵泉祭礼拝での学長奨励についても、ここに記させていただきます。
礼拝 奨励 今こそしなやかに、強(したた)かに
皆様、恵泉祭の礼拝にいらしてくださいました。まず、短期大学英文学科・園芸生活学科42回生、そして、大学日本文化学科・英米文化学科Ⅱ期生の皆様、「おかえりなさい」。そして、オープンキャンパスにいらした高校生の方とその保証人の方々、「ようこそ」いらしてくださいました。本日は高校生の皆様をこの恵泉女学園大学に一日体験入学された学生さんとしてお迎えさせていただきます。また、本日は宗雪理事長・中山学園長・一色特別顧問をはじめとして学園関係の皆様、名誉教授の先生方、かつて同僚として過ごした教職員の皆様にも出席いただいて、現教職員と共に礼拝のひと時をもつことができますことを感謝いたします。
チャペルの外では、在学生たちが、恵泉祭を実行しております。今年の恵泉祭のテーマは、『華維泉祭』。これまでの恵泉の伝統を受け継ぐという思いを「維」に込め、これからの時代を華やかに生きたいという希望を「華」に込めて、学生たちが考えたと聞いております。
私が学長に就任して以来、この3年近く注力している「生涯就業力」の育成は、まさに「華維泉祭」と言えるかと思います。女性活躍がいわれつつも、その実現がまだ道半ばの現状にあって、さらに近未来は予測不可能な激動も予測されています。そんな時代だからこそ、女性たちはしなやかに、強靭に生きていくことが必要です。言葉を換えれば、いつ何があってもめげずに、たとえ岐路に立っても臆することなく、課題解決に向かって挑戦する力。しかも、自分ひとりで頑張るのではなく、他者と共に歩み、共に生きる力を発揮することが、これからの時代を生きる女性の真の活躍の姿であり、そうした力の育成に努めることが、女性の高等教育機関である女子大学に求められていると私は確信しております。
「生涯就業力」育成を目標に、在学生のためのカリキュラム改革や学修支援に、さらには卒業後も支援し続ける道を整えているところですが、これはけっしてここ数年の間に思いついた新しいことではありません。平和構築に尽くす自立した女性の育成を願って1929年に学園を創立された河井道先生の女子教育の理念を確かに受け継いだものです。
「皆が踏みならしたまっすぐな道を行くのではなく、新たな道を切り開く開拓者とおなりなさい」と言われた河井道先生のお言葉の意義とその発揮が、平和が再び脅かされそうになっている昨今、とくに問われていると考えます。「汝の光を輝かせ」とも言われた河井先生のお言葉の深さも改めて思います。自分一人だけが輝くのではなく、周囲の人がその人らしく輝けるように、そんな光を照らせる女性になりなさいというこの言葉に、女性がこれまで味わってきた生きづらさの中に潜む歴史的な課題を克服し、真の共生の社会を築く大切さを考えさせられます。
この度、大学創立30年を記念して、学園の史料室が『「平和研究入門」に見る恵泉女学園大学の平和教育』についてまとめた巻頭言に中山洋司学園長が次のような言葉を寄せておられます。「本学の平和教育は国際機関等で活躍する人材の育成のみならず、平和に貢献する市井の市民の育成を意図してスタートしたものである。他大に例をみない本学の平和教育の特色は誇るべきものであり、それが現在の「生涯就業力」へとつながっている」と。さらに年表には30年の平和教育の歩みが詳細にまとめられています。開学当初から勤務している私には、年表に刻まれた一行一行が今日につながる宝の道に思えて、感無量であると共に、「生涯就業力」育成の責務を痛感するところです。
こうして、「生涯就業力」は恵泉創立以来の歴史を受けつぎ、これからの時代にふさわしい女性活躍の新たな歴史を創る挑戦でもあると私は考えておりますが、しかし、それはこの多摩キャンパスだけでできることではありませんし、広く世界に発信していく必要があることは言うまでもありません。
先日、10月20日に韓国の梨花女子大学との協定締結の調印をいたしました。梨花女子大学は皆様もご存じのように、女子教育130年以上の歴史をもち、14の単科大学と14の大学院をもち、学生数25000人余りという世界屈指の女子大です。その梨花がなぜこの小さな女子大である恵泉と?と思われるかもしれません。これまで世界を牽引するあまたの競争的なリーダーを輩出してきた梨花女子大ですが、従来とは異なる女性活躍のリーダー像の模索を始めています。そのときに着眼されたのが恵泉の「生涯就業力」でした。過去3回にわたって、女性の生き方と女子大の使命をめぐってシンポジウムを積み重ねる中で、女性活躍の時代を迎えた今、新しいリーダーシップの育成の必要性とそのために女子大が果たすべき使命を確認しあった結果の協定締結であり、梨花女子大の現職総長ほか、アジア女性学センターの新旧所長も来日されて、協定締結記念シンポジウムを開催いたしました。国も文化も規模も異なる二つの女子大学ですが、これからの時代を担う女性の育成のあり方で理念と目標を同じくし、真の女性活躍を求めた挑戦をスタートさせたことをご報告させていただきます。
最後に一人の在校生の声を紹介いたしましょう。「人生に平らな道はない。泥まみれになっても美しく咲くハスの花のように夢に向かって生きていきたい」。これは、「生涯就業力を磨く~きちんとした大人になるための社会人基礎力とは」と題してこの春に行われた宗雪理事長の特別授業を受講した学生の感想です。この他にも学生たちの率直な声とそのひとり一人に理事長から返された手紙をまとめた冊子を本日、お手元に資料としてお配りさせていただきました。また、もう一つ、この30年の間に巣立っていった卒業生たちの活躍をまとめた「卒業生たちの生涯就業力」もお手元にお配りさせていただいております。
在学生、そして卒業生が、恵泉の女子教育の理念と学びをたしかに受け継ぎ、真の女性活躍の姿を社会の隅々に発信してくれることを、そして、それが平和と共生の社会を築く力となることを心から願いたいと思います。しばし黙とうをささげて、礼拝を終わらせていただきます。
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