「恵泉祭」報告 ~その1~
2019年11月11日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
先週の日曜日(11月3日)、「恵泉祭」が催されました。天気予報は雨マークでしたが、幸いにも好天に恵まれ、たくさんの来場者をお迎えすることができました。
「恵泉祭」は学生主催の祭典。聖歌隊の賛美・祈祷に続いて、実行委員長田村奈々さんから今年のテーマ「クローバー ~根を張れ!恵泉~」への思いと共に力強い開会宣言で幕が落とされました。このオープニング・セレモニーには、朝早い時間にもかかわらず阿部裕行多摩市長が駆けつけてくださり、また学園からは宗雪雅幸理事長・中山洋司学園長・一色義子特別顧問はじめ恵泉ゆかりの方々が、さらには地域の方々もたくさんご参加くださいました。
またこの日は、卒業後25年の方々をお迎えするリユニオンの日。今年は短期大学英文学科・園芸生活学科43回生、大学3回生をお迎えして、大変懐かしく嬉しいひと時をもつことができました。
今年の恵泉祭の中で特にご報告させていただきたいのは、卒業生の声です。恵泉祭の中で行われたミニシンポジウム『卒業生にみる女性キャリアと「生涯就業力」』では、社会で活躍している卒業生が登壇して、すばらしいメッセージを送ってくださいました。
卒業生たちの懐かしい声を聞き、輝く姿を間近に見る喜びに充たされた一日でもありました。
リユニオンとミニシンポジウムについては、来週、「恵泉祭報告~その2~」として、改めてご報告させていただきます。
今日は、多摩キャンパスと南野キャンパスの両方で繰り広げられた盛りだくさんのプログラムの一端を写真でご報告させていただくと共に、恵泉祭にいらしてくださった方々と共に分かち合った礼拝での私のメッセージをここに記して、恵泉祭の速報とさせていただきます。
礼拝「今こそ、恵泉の心を」
皆様、おはようございます。ようこそ恵泉祭に、そして、この礼拝にお運びくださいました。地域の方々、恵泉にゆかりの方々も、このようにたくさんいらしてくださいまして、本当に有難うございます。そして、短期大学英米学科・園芸生活学科43回生の皆様、大学3回生の皆様、「おかえりなさい」。皆様と共に、この礼拝のひとときを持たせていただけますことに深い感謝をもって、「今こそ、恵泉の心を」と題してメッセージを送らせていただきます。
「恵泉の心は?」と問われたとき、私はまず校歌を思い浮かべます。 "愛の泉と湧き出し"から始まる校歌には、今からちょうど90年前、河井道先生が恵泉女学園を創立されたお心が込められています。恵泉の心は、まさに愛です。
第一次世界大戦後の荒れ果てた欧米各地の様をご覧になり、さらには世界恐慌がしのび寄る不穏な足音を聞かれた河井先生が世界平和構築の必要性を痛切に願われたお心は、この地球上に、そして、そこに生きる人々への愛に他なりません。そして、世界平和構築を成し遂げることができるのは女性の力を置いてないと固く信じられたお心には、女性たちへの揺るぎない愛が託されていることを思います。
学園創立以来、河井先生の志を確かに受け継いできた歴史の上に、今、恵泉女学園大学は「生涯就業力」を教育理念の中核に掲げ、全教職員あげて学生の育成に注力しております。紆余曲折を経て、近年、日本社会はようやく女性活躍の必要性を認めておりますが、しかし、スローガンと現実の乖離も少なくなく、女性活躍はいまだ道半ばです。そうであればこそ、真にあるべき女性の活躍像を提起すべく掲げている「生涯就業力」です。
"いつ、いかなる時にも、自分らしい目標を見失わず、地域や社会に尽くすことに喜びをもって、しなやかに凛として生きる女性の力"を意味している「生涯就業力」ですが、その中核を成すものは、「汝の光を輝かせ」と言われた河井先生のお言葉です。自分ひとりだけが輝けばよいのではなく、大切な方や周囲の方々がその人らしく輝けるよう、その光の源となることです。他者を押しのけて競争社会を勝ち抜くような、これまでの男性中心社会が掲げてきた活躍とは異なる新たなモデルをこれから社会で活躍する女性たちに提示することは、河井先生の理念を受け継ぐ女子高等教育機関としての恵泉女学園大学の使命と考えております。
私が学長に就任して3年余り、この「生涯就業力」について、折にふれて繰り返し語ってきましたが、先日、一人の学生がこんな声を聴かせてくれました。"私は恵泉を卒業したら、自分らしく生涯にわたって活躍したい。生涯就業力を磨き続けたいと思っています。でも、現実の社会を見渡すと課題が山積です。どうやって壁を乗り越えたらいいのか、夢と不安でいっぱいです」と。私は答えました。「生涯就業力は愛です。そして愛はチカラからです」と。
"愛はチカラ"という言葉には2つの意味をかけております。まず、一つは「知識・知性の知」です。大切な方や社会のために尽くしたい、世界平和構築に尽くしたいとの思い、志は、社会の現状を冷静客観的に把握する「知」から始まります。課題を見いだし、どのように解決するか、分析力と行動力の源も、「知」なくしてあり得ません。そうして「知」を磨き続けること、それが壁に果敢に挑戦するパワーとしての「力」となることでしょう。愛は知から始まり、知が愛の実現の力となると答えました。
学生たちとこうした会話を交わせるキャンパスで、女子教育に携われる幸せを日々、かみしめておりますが、その学生たちが今、外では恵泉祭をにぎやかに繰り広げています。学生たちが考えた今年のテーマは「クローバー ~根を張れ!恵泉」です。
恵泉祭実行委員長の言葉をご紹介いたします。"生涯にわたって自分らしく生きる希望を持ち、目標を探し続け、自分らしく生きる力である生涯就業力。私たちは恵泉祭を通し、クローバーのように、他者と共に歩み、共に生きていける力を身につけたいと思います"。
学生たちがイメージしたクローバーは四つ葉のクローバーで、「愛」「希望」「信仰」「幸福」の意味をこめているとのことです。その四つ葉のクローバーはなかなか見つからない、確率は1万分の一とも十万分の一とも言われていますが、実はこの多摩キャンパスには四つ葉のクローバーがたくさん見つかる場がありますよと、職員の方がささやいてくれました。クローバーは人がたくさん行きかう場に繁殖するとのことです。学生や教職員はもとより、地域の方々、海外からの留学生やお客様たちがたくさん集いあうこの多摩キャンパスだからこそ、その出会いが「愛」と「希望」と「信仰」、そして「幸福」につながっているのかと思います。皆様も、今日一日、この多摩キャンパスのあちこちを訪れてくださることでしょう。
皆様が歩まれた足跡が四つ葉のクローバーの芽生えにつながることを願います。
河井先生が校歌に込められた「愛の泉」が、この多摩キャンパスに豊かに湧き続けることを皆様と共に願って、礼拝の最後を黙祷の時をもって終えたいと思います。
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