先輩2期生から在校生に贈られた素敵なメッセージ
2019年12月16日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
「1年のゼミ生のお母様が、私の授業でお話をしてくださることになりました。ご都合がつけば是非いらしてください」。1通のメールは杉山圭以子先生(インド近現代史)から。授業は1限が1年生対象、2限が3・4年生対象でした。
ゼミでメインスピーカーをつとめてくださったのは村田晃子さん。本学の2期生(元・英米文化学科卒業)ですが、お嬢様が秋学期から杉山先生のゼミ(教養基礎演習)を受講していることが、今回のきっかけとなったとのことです。
村田さんは本学を卒業して航空会社に勤務。今も現役CAとして国内線国際線を担当しておられる経験を基に、次のようなお話をしてくださいました。
- 仕事は楽しいことばかりではない。こんなはずではなかったと思ったり、難しい仕事をこなさなければならなかったり、苦手な人と一緒に働くことも、しばしばです。でも、それが仕事。人とかかわらない仕事はありません。どんな仕事も考え方次第で楽しくなる。挨拶と笑顔を絶やさず、コミュニケーションに努め、苦手な仕事にも前向きに取り組む習慣をつけて能力を磨くこと。それがお給料をいただいて働くということでもあります。
そして、自分が伝えたいことを相手に分かりやすく伝え、気持ちよく聴いていただくための一例として、機内アナウンスのパフォーマンスも披露してくださるなど、実に素敵なスピーチでした。
中でも私が印象に残ったのは、仕事と子育て・家庭との両立についてのお話でした。9.11のニューヨーク同時テロ事件の日、搭乗していたロスアンジェルス行きが急遽、カナダのバンク―バーに着陸。一切の連絡手段も絶たれた中、当初、2泊4日のフライトの予定が、日本にいるご家族に連絡がとれないまま6泊8日に。「でも、娘は夫とシッターさんと元気に待っていてくれました」と、仕事を理解してくださるお連れ合いをはじめとして、援助してくださった方々への感謝の思いを語られました。
女性が家庭をもちながら仕事を継続する大変さは今もけっして小さくなっていませんが、村田さんの時代の大変さは今と比較にならなかったことでしょう。「ここまで頑張ってきたのだから、その姿を娘さんが理解できる年齢になるまで辞めてはだめですよ」と小学校1年の先生の励ましの言葉が支えだったとのことでした。
お母様のお話を聞いていた村田さんのお嬢様は、「仕事を続けながら私のことをどんなに大切に思っていてくれたか、言葉で聞くのは今日がはじめてです。でも、それは母の姿からしっかり感じていました」と。
この日、村田さんと一緒に訪ねてくださった同期生の鈴木康枝さん・大村千晶さん・藤岡佳保里さん・橋本裕子さんも、それぞれのご経験を基に、学生たちに素敵なメッセージを贈ってくださいました。
- 出版社勤務を経て、結婚・出産で家庭に。その後の再就職は非正規。産休や育休の代替勤務も経験。そういう非正規の人の働きがあって、正規の人の勤務が守られているという現実も知ってほしい。非正規の仕事はきついことも多く、契約への不安もあるが、どんなときも誠心誠意、向き合うことを心がけている。そこから得るものも小さくない。
- 女性の人生は実に紆余曲折があって、価値観が変わることもしばしば。だからこそ、あきらめないことが大切。努力すれば必ずそれだけの収穫はある。
- 仕事の現場に立ってみると、どういう人が本当に求められているかが良く分かった。ただリーダーシップをとろうとする人ではない。一緒に働く人のことをまず考えられる人。そういう人がリーダーになったとき、本当に調和のとれた楽しい仕事場になる。
- 人生思い通りにならないことが少なくない。だからこそ、計画が大切。計画通りにならないとしても諦めない。修正しながら、自分の道を探すためにも、まず計画を。そのためにはパートナーとなる夫選びも大切(・・・ユーモラスにコツを伝授してくださいました)
等々
50歳を目前にした2期生の方々でした。恵泉を卒業してから30年近い歳月の中でいろいろなことがあったことと思いますが、恵泉での学びを誇りとしながら輝きを増している大先輩たちの話に在校生たちはじっと耳を傾け、その姿を真剣に見つめていました。
授業を終えたひと時、杉山先生がチャーイ・パフォーマンスでおもてなしくださいました。私にとってこんなにおいしいチャーイ・ティーは初めて。この日のために、焼いてきてくださったパパドも本当におしいかったです。本場インドの味を堪能させていただきました。
杉山先生は恵泉に勤務する前、インドの日本大使館に勤務されていました。実は村田さんは在学中に「日本さくらの女王」になって各国との親善にも務めた方ですが、インドを訪問した時がちょうど杉山先生のこの大使館勤務時代と符合していたことも判明して、話が盛り上がりました。
2期生の皆様、そして、杉山先生、本当に有難うございました。
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