生涯就業力STEP授業と"多摩学"
2020年06月08日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
昨年度から恵泉ブランド「生涯就業力」の理念に特化した科目「生涯就業力STEPⅠ~Ⅶ」を開講したことは、すでにご報告した通りです。
昨年度は毎回、レポートに綴られた学生たちの声に励まされたり、改訂課題の多いことに頭を抱えたりという試行錯誤の一年でした。
2年目に当たる今年度は、7人の教員(遠山先生・青木先生・宇野先生・水上先生・志賀先生・藤田先生・桃井先生)がコアメンバーとなって企画立案に注力していた矢先に新型コロナウィルス感染拡大という事態に見舞われました。一学年、300名~350名余りの学生を対象としたオンライン授業への切り替えの大変さは言葉には尽くせないものがあったかと思います。連日、おびただしいメールの交換と数時間に及ぶZOOM打ち合わせ会議を経て迎えたオンラインでの「STEP授業」。私も毎回参加していますが、ゲストスピーカーのメッセージ、YouTubeで見る動画、ゼミ教員をはじめとした多くの教員がファシリテーターとして見守る中でのグループ討議等々、ZOOM画面に展開される起伏に富んだ光景にすっかり魅了される思いです。
コアメンバーの一人の遠山克美先生にSTEP授業への思いを、そして、STEPⅢで"多摩学"を担当した桃井和馬先生に、多摩学への思いを綴ってもらいました。
2020年度「生涯就業力STEP授業」に寄せて 遠山克美(生涯就業力)
「生涯就業力STEP授業」は今年2年目を迎えます。現代社会は変化のスピードが速く、インターネットで誰でも膨大な情報を手に入れることができるため、豊富な過去の知識よりも、次々に出現する新しい状況に対応して、自ら考え、判断し、行動する能力を身につけることが必要とされています。仕事も専門化・複雑化が進む中で付加価値が求められる仕事には、学力等の「ハードスキル」と対比される「ソフトスキル」(コミュニケーション力、創造力、分析力、柔軟性、問題解決力、チームビルディング、傾聴力等)が求められています。
「生涯就業力STEP授業」は、この他者と触れ合う際に影響を与える一連の能力の修得を目的とし、学生同士の協同学習で行います。協同学習では自身の問題(学習課題、グループの維持など)に自分たちの方法で取り組み、当該の問題を解決するだけでなく、将来同様な問題に当たったときの解決手法まで身につけることが目標です。生涯就業力は一生をかけて成長させていくものですが、そのスキル修得の基本科目になるように考えています。
多摩学の魅力 桃井和馬(メディア社会学)
「多摩を知り、多摩から学ぶ」を標語に、様々な角度からこの地域を思索する試みが恵泉の「多摩学」です。
山梨、東京、神奈川をつなぎ東京湾までの138キロに及ぶ一級河川「多摩川」。河口から上流を目指して遡ること30キロの地点に、大学が位置する多摩市があります。多摩市は都心から電車で30分ほどのニュータウンがある街。しかし歴史は案外古く、万葉集にも、古事記にも多摩に関係する記述が残されているのです。また新田義貞軍が鎌倉幕府を倒す直接の戦いとなった『関戸の合戦』の舞台として、明治・大正時代になると、天皇がウサギや鮎を獲るために訪れたのが多摩でした。
そんな多摩が世界のアニメファンに知られるようになった理由は、ジブリのアニメ『平成狸合戦ぽんぽこ』、『耳をすませば』の舞台が多摩市だったことや、『未来少年コナン』などを製作した日本アニメーションの本社スタジオが多摩市にあるからです。もちろん『ハローキティ』で有名な『サンリオ ピューロランド』はアジアを中心にあまりにも有名です。
様々な角度から多摩を調べ、学び直すこととは、日本の歴史、ひいては高度経済期以降の日本社会の変遷を再定義する試みでもあるのです。 舵取りが難しい時代を迎えた今だからこそ、私たちは足元から、私たちの立ち位置を見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
多摩から日本を、多摩から世界を見つめる恵泉の『多摩学』が今、本格的に始まりました。
以下、桃井先生提供の写真です
« 学生からの嘆願書に応えて | メインページ | 生涯就業力STEP授業Ⅲと多摩学~その2~ »