チャペルアワー ~職員を偲ぶ~
2020年07月06日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
梅雨明けが待たれる今日この頃です。キャンパスの緑が日ごとに鮮やかに深みを増し、チャペル周辺のアジサイの美しさがひときわ目を引く6月末の週に、大学事務局長の感話が収録されました。昨年、天に召された一人の職員を偲ぶ局長の思いに胸打たれます。その様子は、チャペルアワーとして、学内者対象の学内ポータルサイト内で共有されています。いつもであればチャペルで、多くの教職員や学生が集い、共に祈り、共に偲ぶことができたのではないかと残念な思いです。
ここに局長とご遺族の了解を得て、紹介させていただきます。
チャペルアワー「心を高く15」
大学事務局長 舘野英樹
旧約聖書P.1036 コヘレトの言葉3章1節
何事(なにごと)にも時があり天の下(した)の出来事にはすべて定められた時がある。
みなさま、おはようございます。
今日は昨年まで恵泉に在籍してくださった一人の教務課職員をご紹介いたします。
阿部環さんという女性の職員です。阿部さんは昨年、2019年の3月9日に癌の病を患い天に召されました。阿部さんは今から16年前の2004年に教務課職員としてフィールドスタディ(FS)やコミュニティサービスラーニング(CSL)のプログラムをサポートするパート職員として入職されました。約8年間、J棟にあるフィールドスタディ室、通称FS室で勤務をされその後、2012年にA棟事務所の教務課へ席を移動していただき、FSやCSLの業務だけでなく教務課の業務全般をやっていただくようになりました。
阿部さんは、短期間で教務課の業務全般を熟知された大変優秀な方で、加えて学生のこと教職員のことを親身になって考えてくださる本当に頼りになる方でありました。
そんな阿部さんを私は尊敬しておりました。阿部さんと私のかかわりで思い出のエピソードを3つご紹介いたします。
1つ目は私にくださったメッセージです。
私が2012年に人事異動で教務課を去る時に、教務課の皆様が寄せ書きをくださいました。その当時、教務課は私を含めて7人でした。そのときの阿部さんからのメッセージです。
「教務課のムードメーカーで、いつもみんなのことを見守っているというか、見守られている舘野さんが教務課を去られるのはとても残念ですが、我慢いたします。どうぞがんばってください。P.S.私のことを教務課に入れてくださってありがとうございます。私もがんばります」。
2つ目は教務課でのいつもの阿部さんの口癖です。
2012年に私が教務課を去ってから、4年半後の2016年10月に私は再び教務課を兼務することになりなりました。4年半の間での人事異動で、2012年に私が教務課を去ったときのメンバーで、2016年に教務課に残っていたのは阿部さんともう一人の職員のお二人でした。その4年半の間に、阿部さんは誰よりも教務課の業務を熟知して先の先を考えて仕事をしてくださっておりました。2016年以降の阿部さんは、教務課の皆にいつも「この業務、いつまでに終わらせておかなければいけませんよ、このままだと終わりませんよ、これでいいのですか、ちゃんと考えてやってください」と節目ふしめの時にはいつもご助言くださいました。普通であれば、自分以外の人に苦言を呈することはなかなかできないことです。そんなこと言ったらいやな気持にさせてしまうようなことも、あえて言ってくださっておりました。学生や教員のために言ってくださっておりました。そして何より仲間の教務課の皆のために言ってくださっておりました。本当に有難かったです。
3つ目は阿部さんが最後の勤務になった日のことです。
2018年夏から阿部さんは入退院を繰り返し、その後2019年2月5日に職場復帰してくださいました。2月6日そして翌週の12日と13日まで出勤してくださり、阿部さんとの勤務が一緒となった最後の日のことでした。仕事終わりに、阿部さんへ「おつかれさまでした」と声をかけさせていただいたら、阿部さんが一言「舘野さん、本当に職場復帰させてくださり、ありがとうございました。仕事させていただいて、本当に今日も楽しかったです」と言ってくださいました。それが阿部さんとの最後の会話でした。
今でも教務課をはじめ、事務所全体で業務が滞っていると、阿部さんの厳しくも優しい声が聞こえてきます。それは、きっと私だけではないと思います。
恵泉は1人の学生の皆様を入学から卒業まで、複数の教職員でサポートさせていただき、学生と教職員が一緒に成長している大学です。学生の皆様一人ひとりを大切にして、全力でサポートする大学です。今目の前に見えている今在籍している教職員だけでなく、今目の前に見えていなくとも過去に在籍していた私たちの先輩教職員も今の学生の皆様を思い、成長を見守ってくださっているということを、ぜひ覚えてくださればと思います。新入生はじめ学生の皆様とまた直接お会いできますことを心より楽しみにしております。
一言お祈りいたします。
主なる神さま
今日もこうして礼拝が守られましたこと感謝いたします。
阿部環さんは心を高く生きられた方だと思います。私たちは阿部さんに教えられたことを忘れず、学生のみなさんを全力でサポートし続けてまいります。
阿部環さんがそうであったように、あなたから授かった賜物を人生において最大限、隣人のために用いることができますように、勇気と励ましを与えてください。
恵泉に関わる人はじめ全ての方々の病、苦しみ、痛みを和らげてください。
恵泉の生徒、学生をはじめ全ての児童、生徒、学生が安全に、勉学に努められますようお見守りください。
この祈り、主イエスキリストの御名により御前におささげいたします。アーメン
私も阿部さんには大変お世話になりました。お願いしたことはどんなことでも気持ちよくしてくださったことはもちろんですが、お願いしないことでも授業に必要なことや学生のためのこと等を考えてくださり、しかも、さりげなくしてくださる気遣いに、どれほど助けられたことか、わかりません。阿部さんの柔らかで優しい笑顔とお声に支えられていたことを改めて思います。私たち教員や学生たちにとっては優しさの塊のような阿部さんでしたが、その陰にこれだけの強さを秘めていらしたことを、この度の局長の感話に知らされました。多摩キャンパスで共に過ごさせていただけたことに、心からの感謝をささげます。