2020年9月17日 2020年度9月卒業式のご報告

2020年09月21日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

="先週の木曜日(9月17日)に2020年度の卒業式を執り行いました。この春先からの新型コロナウィルスの世界的感染拡大の下、大きな不安を抱え、日々、行動自粛の不自由さにも直面しながらも、無事、卒業を迎えるまで努力を続けてきた学生たちです。
感染予防に留意しつつ、チャペルに集ったご家族や教職員と共に晴れの門出を祝えたことをとても嬉しく思います。なお、残念ながら祝会は中止といたしましたので、式の様子だけですが、写真でご報告いたします。併せて卒業生に向けて贈った式辞もお読みいただければ有難く存じます。

式辞 今、羽ばたくとき

恵泉女学園大学学長 大日向雅美

皆様、学部のご卒業、大学院のご修了、おめでとうございます。
この春先からの新型コロナウィルス感染拡大の下で、幾度も押し寄せてきた未曾有の変動の中、無事、今日の日をお迎えになられたことに心からのお祝いを申し上げますとともに、この日をご家族・保証人の方々、そして、教職員と共に祝えることに感無量でございます。

 

皆様の晴れの門出に私が贈らせていただく言葉は、「今、羽ばたくとき」です。
しかし、この言葉を贈りつつも、これから皆様が羽ばたかれる時代は、どのような時代になるか、正直、想像がつきません。新型コロナウィルスで、私たちの生活も世界も一変しました。コロナの収束にはかなりの時間がかかるといわれていますが、仮に収束したとしても、世界はもはや元に戻らないのではないかとも思います。
むしろ、さらにこの先も何が起こるかわからないことが日常となる「ニューノーマル時代」となるともいわれています。

予測不能な未来社会ですが、しかし、確かに言えることがあると私は思います。
時代の大きな岐路にあって、これからの時代を創る主役は若い皆様だということです。社会にイノベーションが求められているとき、それに応えうるのは若い世代の創造性であることは、これまでの歴史の中で繰り返し証明されてきたことです。

コロナ以前とは様相を異にする新しい未来を創る仕事が託された若い皆様に大切なことは、逆説的に聞こえるかもしれませんが、後ろを振りかえることです。この度のコロナ禍が私たちの何を変え、私たちから何を奪い、何を気づかせてくれたのか、を振り返ってみてください。

「不要不急」「三密を避ける」「ソーシャルディスタンス」等、この間、幾度となく叫ばれた言葉です。感染拡大予防上の必要性から言われたこれらの言葉ですが、それ以上に、人と人とのかかわりがどれほど私たちの生きる力となってきたかに気付かされたのではないでしょうか。人と会えない・触れあえない環境に置かれて、改めて私たちは他者と共に生き、相互に分かち合うことなくしては、生きられないことに気づかされました。「孤立」を余儀なくされて改めて痛感した「共生」と「連帯」の意義をかみしめたいと思います。

さらには、「格差」と「差別」が私たちの何気ない日常の中にかほどに根を張っていたのかを知らされたのも、コロナ禍がもたらしたものでした。
「格差」や「差別」に無自覚なまま「共生」や「連帯」を語ることがいかに罪深いことか、真に「共生」と「連帯」の社会を築くためには、私たち一人ひとりが不正義や不公平さから目を背けがちだったことに、そして、それを許してきた自身の弱さと鈍感さを猛省する必要にも気づかされました。

新たな時代を創る皆様には、試練が大きいことと思いますが、しかし、それはけっして苦難ばかりではありません。新しい時代を創るための喜び多き試練としていただきたいと思います。
「まっすぐな狭い道を歩くこと、人々が踏みならした道を行くことに満足せずに、自分自身開拓者となって道を明るく照らしていく者におなりなさい」と言われた河井道先生のお言葉の真価が、今、まさに問われているときです。そして、そのための力の基礎を皆様はすでにこのキャンパスで学び、身につけられました。いつ、なにがあっても自分を見失うことなく、目標をしっかり持ち続け、自分を大切にすると同時に、身近な方を大切にし、地域に、社会に貢献することに喜びを見出す力、すなわち「生涯就業力」の意義を学ばれ、そのための知識・技術、なによりも志を身につけられた のです。

今、世界で、この日本で起きていることが、後々振り返ってみると、歴史の大きな岐路だったといわれる、その瞬間に立ち会いながら社会に羽ばたいていかれる皆様が私にはとてもまぶしく見えます。
皆様のこれからの一日一日が新しい歴史を創るリアルタイムとなるのです。
ご活躍とお幸せを心から祈っております。

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