タクシー業界にも確かな女性応援の風が
2020年11月23日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
日ごとに秋が深まって、キャンパスの木々も美しく色づいています。そんな秋の好天に恵まれた先日、km(国際自動車株式会社)代表取締役社長の西川洋志氏が学長室をお訪ねくださいました。
西川社長とは以前、「生涯就業力」をテーマに対談をさせていただきました。
タクシー業界のホスピタリティ向上に努められ、女性活躍にもいち早く着手されているお話は大変感銘深く、刺激的でした(学長Blog★対談シリーズVol.9 この方と『生涯就業力』を語る)
この度のご訪問でも話題は女性活躍でした。
一つは、この春、入社した本学の卒業生の近況をお届けくださいました。
社員の方々が800人余りいる営業所で、女性ドライバーとしてはつらつと仕事に励み、職場を明るく生き生きとするムードメーカーになっているとのことです。
多くの社員や新入社員がいる中、本学卒業生である新入社員について社長自ら、お名前を憶えてくださり、日頃の勤務状況や良いところをみてくださってお伝えくださることに感激し、とても嬉しいと、同席した舘野英樹事務局長も大変喜んでいました。
卒業生の近況から、女性活躍に欠かせない男性の育児休業に話題が及びましたが、そこで西川社長がもう一つ、とても素敵なお話をしてくださいました。
男性の育休促進はもちろん大切ですが、生まれる前のサポートも必要ではないか、陣痛が起きたときに、妊婦が一人で病院に向かわざるを得ないこともあって、その時の心細さや不安がとても大きいと私がお話したとき、kmのマニティマイタクシーサービス(業界で唯一)をご紹介くださったのです。
全車両に吸水防水シートを常備して、迎車時には後部座席シートに敷いていること。そして、料金の支払いは、後払いでの精算ができるということでした。
破水でタクシー車内を汚してしまわないかという妊婦の不安や、陣痛で大変な時にタクシー料金の精算に煩わせないようにという配慮は、まさにホスピタリティにほかなりません。
こうしたサービスが生まれた背景にも、女性社員の力が発揮されていたとのことです。当初は男性社員が「お客様相談室」に寄せられた妊婦さんの不安の声に応えようとしていたところに、出産経験のある女性社員が参画し、さらには助産師会の指導も受けて、一気に企画が成就したとのことです。
詳しく知りたいとお願いしたところ、後日、社長室からご説明が届きました。
- マタニティマイタクシーの緊急配車は、日々20件余りあります。お客様に一番近い場所にいるタクシーに配車指示がいくため、乗務社員はマタニティマイタクシーの配車指示があるとドキドキしながら、最善の準備をして向かいます。タクシーができる社会貢献として、乗務社員の誇りとなっています。
- サービス開始より7年8か月が経過していますが、車内出産が7件ありました。
病院に向かっている途中で産まれてしまいそうになって、乗務社員が機転をきかせ、途中の産院に連絡をして対応して事なきをえたケース。破水をしてしまった妊産婦さんの介添えをしてそのシートを病院に渡したところ、破水の量がわかると看護師さんに感謝をされたケース。たまたま通りかかったパトカーに妊婦さんが破水をされた事情を説明したところ、病院まで先導してくれて、救急車を呼ぶよりも早く病院につくことができて、無事出産されたケース等々があります。365日24時間体制での対応をしています。絶対にお断りできませんので、専用ダイヤルを用意して、最優先で配車をしています。コールセンターのオペレーターは電話で妊産婦さんの状況を丁寧に聞き取り、乗務社員と連携をとりミスがないように慎重に配車をしています。
以前の対談時に、西川社長が「自分には過去はない。今を、そして、未来を見ているから」とおっしゃったお言葉が印象的でした。業界を力強く牽引しながら新しい時代を切り開いていらっしゃる方のすばらしさを感じたことでしたが、こうした志をもったリーダーのまなざしのもとで、女性の活躍もまた守られ、推進されていることを改めて思いました。