2021年度入学式挙行のご報告
2021年04月05日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
4月1日、好天に恵まれて、2021年度入学式を執り行うことができました。
昨年の入学式は9月まで延期せざるを得なかったことを考えますと、挙行できたことに大きな喜びと安堵を覚えました。
もっとも、感染予防対策上、式場参列は学生のみとして、ご両親・保証人の皆様には卒業式と同じく、別室で、あるいはご自宅でご視聴いただく形式で行いました。
今年は開花が早く、入学式までもってくれるか心配された桜でしたが、新入生を待っていてくれました。青空に桜花が美しく映える多摩キャンパスでの入学式の模様と、学長式辞について、ご報告させていただきます。
詩編 37:37 無垢であろうと努め、まっすぐに見ようとせよ。平和な人には未来がある。
讃美歌 21 560番「主イエスにおいては」
2021年度入学式 式辞 未来をひらく
恵泉女学園大学 学長 大日向雅美
新入生の皆様、ご入学、おめでとうございます。ご家族・保証人の皆様には、お嬢様が今日の佳き日を迎えられたことを、心からお喜び申し上げます。
コロナ禍の収束がなかなか見えない中ではありますが、こうして2021年度入学式を挙行し、皆さまとお会いできますことに、教職員一同、心からの喜びをかみしめております。
この一年余り、私たちは想定を超える激変に翻弄され、大きな苦しみと悲しみを味わっております。特に若い皆さまが経験された不安や悩みはいかばかりかと思います。
でも、皆さまはコロナ禍にくじけることなく、今日の日を迎えられました。長く、暗いトンネルの先に明るい未来を切りひらく日を、恵泉女学園大学でお迎えになられたのです。
明日からこの多摩キャンパスで、あなたの未来に確かな一頁をひらく学びが始まります。
これから先の長い人生をどのように生きていくのか、その方向性を見出し、定めた目標に向かって確かに踏み出すための知識と技術、何よりもそれを支える志を培う日々が始まります。
未知の世界を探求する自由とそこからひろがる可能性を存分に味わうのが、学生時代の特権です。皆さまがこの先、生涯をかけて打ち込むべき課題が見つかることを願います。それが未来を切りひらく道につながることを期待したいと思います。
新しい未来を創ってください。皆さまに託す未来は、女性が創る歴史です。
これまでの歴史HISTORYはHIS STORYでした。男性、とりわけ歴史上、権力をもった男性にもっぱら光が当てられ、語り継がれてきましたが、その陰に隠れて見えなかった小さな事象に心したいと思います。そこには性別や貧富・宗教等を超えた、すべての人の確かな命の営みがありました。女性たちが、どんなに小さな出来事でも大切に目を留め、人が人として尊重されているか否かを問い直すとき、差別や偏見、格差などに打ち克つ真の平和な未来が切りひらかれることを願いたいと思います。
そのために、私は若い皆さまにぜひともご自分の言葉をもってほしいと願っております。日々の暮らしの中で感じた喜びや悲しみ、感動や疑問、ときに怒りを素直に、正直に語り、綴ってみてほしい。確かな知識と人としての品性を伴った言葉です。豊かな教養教育に裏づけられたあなたならではの言葉です。
ご自身の言葉を持つために、1つに「現状を把握し、たくましく解決する力」、2つに「そのための動機・知識・理解・技能を養う力」、3つめに「他者と共に歩み・共に生きる力」を磨くことが大切です。
本学はこの3つの力の礎を「聖書」「国際」「園芸」の学びに置いています。自分を愛するように他の方を愛する心を「聖書」に。アジアや欧米各地に出向き、文化や歴史・生活習慣を異とする人々とふれあい、差別や偏見を乗り越える力を「国際」に。土と自然に親しみ、命の大切さとそれを育む力を「園芸」に学びます。さらに1年次から4年次までのゼミをはじめとした様々な科目の学びを通して、小規模大学の特性を活かした学修支援の体制を整備していることが特徴です。
今日から始まる本学でのこうした学びを終えて社会へ巣立っていかれるとき、皆さまはご自身の一生をゆるぎないものとする力、すなわち恵泉ブランド「生涯就業力」を身に着けておられるはずです。
「生涯就業力」とは聞きなれない言葉かと思います。"いつ、なにがあっても、自分らしい目標を見失うことなく、身近な大切な人や地域、社会につくすことに喜びを見出す力"と定義しています。「就職」とか「就職力」はよく言われています。卒業時点で企業やさまざまな団体に就職することは、自立した社会人としての大切な第一歩です。そのための支援はキャリアセンター・就職進路委員会をはじめとして、本学は最大限の力を注いでいます。
でも、人生は長いです。とくに女性はこれまでも結婚や子育て・介護等の家族的責任で、生き方を変えることの多い人生を送ってきました。自分で望んだ選択であったか、やむを得ない変更であったか、いずれにしても、幾度も岐路に立って選択と変更を迫られることに変わりはありません。まして、これからの社会は従来以上に変化の多いニューノーマル時代を迎えます。いかなる変化にあっても、いかなるリスクに直面しようとも、生涯を通して自分を見失うことなく、自分を大切にした生き方を求め続けることが大切です。それはたった一人の孤独な闘いではありません。他の方を大切にし、他の方と共に地域や社会に貢献することに喜びを見出す力です。私たちは共生なくしては生きられないことは、コロナ禍で人との接触を断たれて、改めて痛感したことでした。
この「生涯就業力」のルーツは今から90年余り前、世界平和構築を願い、そのために自立した女性の育成の必要性を痛感して恵泉女学園を創立された河井道先生の女子教育にかけた願いと祈りにあります。
真の品性と知性をもって「勇気ある女性におなりなさい」と女子生徒たちを励まし続けられた河井先生のお心を、女性活躍時代の女子大学が果たすべき務めとして継承発展させた本学の教育は、これまでもさまざまな評価をいただいてまいりました。
とくに2020年の世界インパクト大学ランキングで、SDGs4「教育の質保障」とSDGs5「ジェンダー平等」で、日本の大学の中で第1位の評価を得ております。誰一人として取り残されることなく、人として尊重される社会を目指した国連の指標であるSDGsにこめられた願いの実現は、まさに本学の「生涯就業力」にあると認められた評価といえましょう。
どうか目を広く社会に、世界に、ひらいてください。ご自分に何ができるのか、何をすべきかを見つめ、考え、行動する大切さと喜び、充実感を恵泉での学びから見出していただきたいと願っております。皆さまが若い柔らかな感性で課題を発見し、疑問を言葉にして成長していく姿をいつもまぶしく思い、いつでも、どんなときでも、手を差し伸べ、力になることに喜びを覚える教職員が皆さまをお迎えしております。
最後に、ご両親、保証人の皆さまには、大切なお嬢様を私どもにお託しくださいますことに、感謝申し上げます。私は1988年の大学開学時から勤務し、この30年余り、多くの卒業生の巣立ちを見守ってまいりました。それぞれが自分らしく生きる道を見出し、どこにあってもなくてはならない人として活躍している姿に、女子教育の大切さとそこに携われる喜びを覚えております。皆さまが大切に育まれたお嬢様が恵泉での学びを得て、かならずやお幸せに、ご自分らしく生きる力を身につけていただけるよう、心してお預かりさせていただきますことをお約束いたします。
新入生の皆さま、ご両親、保証人の皆さまに心からのお祝いを申し上げて、本日の式辞とさせていただきます。