2022年度入学式のご報告
2022年04月04日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
先週の4月1日、2022年度の入学式を執り行いました。緊張しつつも晴れやかな笑顔で集ってくれた新入生とそのご家族・保証人を迎え、温かな雰囲気に包まれて希望に満ちた入学式でした。新入生一人ひとりを大切にお預かりいたします。当日の写真と式辞をもって、ここにご報告とさせていただきます。
2022年度入学式 式辞 新たな学びを この恵泉で
新入生の皆様、ご入学、おめでとうございます。ご家族・保証人の皆様におかれましては、お嬢様が今日の日を迎えられたことをさぞお喜びのことと存じます。「ようこそ恵泉女学園大学へ」、新入生の皆様を、そして、ご家族・保証人の皆様を、教職員一同、心をこめてお迎えしております。
さて、新入生の皆様は大学生になられた喜びと共にこれから始まる新しい日々に不安と戸惑いを抱いておられるかもしれません。新しいスタートは、いつ、誰にとっても期待と不安が伴うものですが、とりわけ昨今の社会状況、国際情勢にはこれまでにない厳しさがあります。
でも、皆様ならきっと未来を確かに切り開いていかれると私は信じております。その皆様を本学にお迎えし、学びの支援をさせていただくことに身の引き締まる思いでおります。
皆様はここにいる年配世代の私たちのほとんどが経験したことのない高校時代を過ごされました。突如世界を襲った新型コロナウイルスの感染拡大によって、高校生活がどんなに翻弄され制約を受けたかを思うと、胸が痛みます。
しかし、未曽有の事態に遭遇し、奪われたもの以上の大切な気づきもまた、皆様は得ていらっしゃるはずです。当たり前と思っていた日常はけっして当たり前ではないこと、私たちが生きていくうえで人と人とが密に交わり、互いに身も心も寄せあう温もりがどれほど欠かせないものか、多感な青春時代にある皆様はどの世代よりも痛感されたことでしょう。
コロナ禍が収束しても想定外の変化が日常となるニューノーマル時代を迎えると言われています。いつ、何があっても、しなやかに、強く生きる力が求められています。
ロシア軍の侵攻に苦しむウクライナの人々の姿に、当たり前の日常が理不尽に破壊されることに真の怒りをもって世界平和に力を注ぐことが私たちに課せられていることを思います。
こうした課題に立ち向かっていくために、皆様の高校時代の貴重な経験を基に、本学での新たな学びがあることを、今日、しっかりと胸に刻んでいただきたいと思います。
大学の学びは専門的な知識と技術を身につけることだと言われています。しかし、ニューノーマル時代は知識や技術も常に変化更新が求められます。大切なことは、変化に柔軟に対応しつつ、自分のこれからの生き方をじっくり見つめ、自分らしく生きようとする姿勢とこころざしを持つことです。
それは必ずしも見えるものではありません。先ほどの聖書の言葉に今一度、目を留めてください。見えないものこそじっくり見つめ続ける力を養うこと、それが恵泉女学園大学での学びです。一言で申しますと、恵泉ブランド「生涯就業力」を身につけることです。「生涯就業力」とは、"いつ、なにがあっても、どこにあっても、生涯にわたってご自分にふさわしい目標を探し続け、ご自分を大切にする力"です。同時に身近な方や地域、社会につくすことに喜びを見出して生きていく力です。
「生涯就業力」のルーツは、恵泉女学園創立者・河井道先生の女子教育にかけた願いと祈りにあります。恵泉の生徒学生が高い品性と豊かな知性をもった勇気ある女性になって世界平和に貢献することを願われた河井先生は数々のお言葉を残されましたが、私は「汝の光を輝かせ」という言葉にとりわけ胸打たれます。私たちは誰もがかけがえのない存在です。自分だけが幸せに輝けばよいのではなく、周囲の方々がその人らしくあることを尊重されて輝けるよう、そうした光の源におなりなさいと言われました。
女性活躍の発想などまったくなかった90年余り前に、河井先生は真に活躍する女性の育成をめざし、それなくして世界平和はあり得ないことを示されました。しかも、女性活躍のあり方を、競争原理ではなく、他者と共に生きる「共生の理念」と不可分の関係の中に位置づけられたのです。誰一人として取り残さない持続可能な社会をめざして2015年に国連が打ち出したSDGsの目標は、すでに90余年前に河井先生が打ち出された理念そのものであり、それを確かに受け継いでいるこの学び舎で、今、皆様の学びは始まろうとしています。
本学の教育はこれまで社会から高い評価をいただいております。世界インパクト大学ランキングではSDGsの「教育の質保障」や「ジェンダー平等」で、日本の大学の中で第1位・第2位グループにランクインされ、他にも「国際性」で6年連続首都圏女子大1位です。
でも、私が何より嬉しく誇らしく思うのは学生たちが巣立っていくときに残してくれる言葉です。先月行われた卒業礼拝でこんな言葉が聞かれました。「私は入学式の日に、おめでとうと言われても実感を持てなかった。これから何をしたいのかもよくわからなかった」。なんと若者らしいまっすぐで素直な言葉かと思いました。その学生はこう続けました。「何よりも今、ここにこうしてある自分はまったく想像できなかった。卒業にあたって、私はこの恵泉に導かれたことに心から感謝しています」。
多くの学生が口にする言葉ですが、恵泉の学びから学生たちは何を得てくれているのでしょうか、学生たちの声をご紹介しましょう。
もう一人の学生の声です。
この学生は高校時代、日々競争に明け暮れ、自分を守るためには人に勝つこと、ときには"攻撃が最大の防御なり"という心境で毎日を送っていたということでした。
「でも、恵泉では友人も先生も職員の方もみな優しい。失敗や間違いをしても誰一人として責めない。"間違っている"と言われたことは一度もありません。相手の意見をよくかみ砕いたうえで自分の意見とどう違うのか、どう伝えたらいいのかを考えてくれるのです。誰からも否定されない安心感から私の心に余裕が生まれました。相手の意見をよく聞いてみよう、この人はなぜこう思うのかを考えてみようという気持ちが生まれました。これが私が恵泉から受けた贈り物です。今、私は"人に何かを与えられる人"になりたいと思っています。
若いということは、変われるということです。明日からの大学生活で存分に学んでください。"世界の事実を知って、変わったのは「世界観」じゃない。「私の未来だ」"と言った学生の言葉も胸に響いて残っています。皆様が明日から学ばれる恵泉ブランド「生涯就業力」。
先ほど、"いつ、なにがあっても、どこにあっても、生涯にわたってご自分にふさわしい目標を探し続け、ご自分を大切にする力。同時に身近な方や地域、社会につくすことに喜びを見出して生きていく力"だと申し上げました。
が、もっとシンプルなキャッチコピーをつけてお伝えしたいと思います。それは、"みつめる 未来 つながる 世界"。皆様が恵泉での学びを通して、どんな未来をみつめ、どのように世界との関係を紡いでいかれるのか、さらにそれがご自身のたしかな未来へとつなげていただけることを期待しております。
最後にご家族、保証人の皆様に申し上げます。これまで大切に慈しみ育んでいらしたお嬢様を私どもに託してくださいまして、感謝申し上げます。本学は小規模大学の特色を最大限生かし、一人ひとりを尊重した丁寧な教育をしております。お嬢様が必ずやお幸せにご自分らしく生きる力を身につけ、社会にあってなくてはならない方となられるよう、教職員心一つにしてお預かりさせていただきます。
今日、新入生のお手元にご入学のお祝として、本学での教育にかける私たちの思いとその足跡を記した1冊の本、『女性の一生』をお届けさせていただいております。後ほどお読みいただければ幸いです。
それでは、新入生の皆様、ご家族、保証人の皆様が、今日からご一緒に豊かな恵泉ライフを始めていただくことを心から願って式辞とさせていただきます。