2023年度9月卒業式のご報告

2023年09月25日
恵泉女学園大学学長　大日向雅美

先週から秋学期がスタートいたしました。今夏は酷暑と台風等の自然災害に見舞われた厳しい日が続きましたが、元気にキャンパスに戻ってきた学生たちの姿をみて、安堵と嬉しさを覚えております。

本日は、9月14日に執り行った2023年度9月卒業式についてご報告いたします。
今期の9月卒業は学部生8名（人文学部3名　人間社会学部　5名）、大学院平和学研究科1名でした。ご家族・保証人の方々と共に、多くの教職員・友人たちが参加して、チャペルで卒業生の門出を祝いました。

式辞

皆様、学部のご卒業、大学院のご修了、おめでとうございます。
皆様をこれまで大切に見守り、励ましてこられたご家族・保証人の方々、そして、教職員と共に、皆さまの前途を祝うひとときを持てますことを、本当に嬉しく思います。

本日の式辞タイトルは、「A　NEW　CHAPTER」です。
皆さまの新しい人生の一頁が開かれるこの日に、先ほど宇野先生がお読みくださった「聖句マタイ福音書13節44－46」を選ばせていただきました。
この聖句に示されているように、人が生きるとは、生涯、何かを選び取りながら生きることに他なりません。

私は皆様お一人おひとりがご自分にとって一番価値あるものを選びとっていただきたいと願っております。しかし、なにを選ぶか以上に、選ぶプロセスを大切にしていただきたいと考えております。
何か一つを選ぶということは、それ以外の多くものを捨てることに他ならないからです。
「あのとき」別のものを、別の道を選んでいれば、と後悔することも人生の常です。
しかし、後悔はけっしてネガティブなものではありません。自分自身を、自分の生き方をあきらめていないからこそ、「あのとき」の選択を振り返り、そこにさまざまな想いを重ねることができるのではないでしょうか。

人生の常である選択と後悔を、次の新たな人生の一頁を切り開くエネルギーとする智恵と力を磨き続けてください。それはこの恵泉で学ばれた「生涯就業力」に他ならないことも、ここで改めて思い出していただきたいと思います。

「生涯就業力」について、今一度、振り返ってみましょう。
「生涯就業力」とは、いつ、何があっても、まずご自分を大切にすることです。ご自分を大切にする心をもって、他の方々のかけがえのなさを想い、共に生き、社会につくす喜びを得ることを生涯にわたって模索し、磨きつづける努力を惜しまないことです。このキャンパスで幾度も耳にされ、とりわけ「生涯就業力ＳＴＥＰ」の授業を通してその具体を学ばれた皆様は、そこにこめられた意味の深さと重みはつとにご存じのことと思います。

一言で自分を大切にすると言いますが、それは具体的にどのようなことなのでしょうか。　
自分を大切にすることは他者のかけがえのなさを侵害することにはならないのでしょうか？
他者との共生をめざすとき、生きている時代や文化・価値観等を異にするがゆえの多様性という課題にも、必ずや対峙することでしょう。

こうした課題の難しさは正解がけっして一つではないことです。むしろ解がないように思えて、ひるみそうになることもあるかもしれません。
そのような時は、河井道先生のお言葉を思い出してください。
「まっすぐな狭い道を歩くこと、人々が踏みならした道を行くことに満足せず、自分自身開拓者となって道を明るく照らしていく者におなりなさい。マイランターンで」

世界平和の構築に貢献する女性の育成を願われた河井先生が女子教育にかけた祈りと願いを女子高等教育の中に開花させ、「生涯就業力」として実を結んだ恵泉女学園大学の学びを皆様は身につけられたのです。

どうかひるまず、ご自分の人生に向き合ってください。この先、良かれと思って選んだことの結果を前に胸を痛めざるを得ず、自信を失うこともあるかもしれません。しかし、そうした時こそ、「生涯就業力」の学びを蘇らせてください。自分はなにを求めようとしているのかに気づき、他の方々の存在の有難さに感謝し、それまで隠れて見えていなかった貴重な宝に目を留める力となるはずです。やがてご自分にとってもっとも確かで大切なものを選べた、と胸を張って思える日を手になさることを私は信じています。

今日から皆様の新たな第一章（Ａ　ＮＥＷ　ＣＨＡＰＴＥＲ）が開かれます。恵泉での学びに自信をもって、新しい日々に向かって羽ばたいてください。皆さまのこれからが豊かなものに満たされ、幸せな人生を送ってくださることを心から願って、式辞とさせていただきます。
ご卒業、誠におめでとうございます。