保証人懇談会にてのご挨拶
本日はようこそご参加くださいました。皆様の中には、3月25日・27日に開催いたしました大学説明会にご参加くださった方もいらっしゃるかと思いますが、2024年度募集停止、そして、数年後の閉校に関して、大きな不安をお与えし、ご心配おかけいたしましたことを改めてお詫び申し上げますと共に、本学を信頼し、お嬢様の入学を決め、また在学を続ける決定をしてくださったことに心からのお礼を申し上げます。
本日は改めて3月時点のことをふりかえりながら、今日までのことについてお話をさせていただきます
募集停止の理事会決定を受け入れることは大学教職員にとって非常に厳しくつらいことでしたが、学生・保証人の皆様・卒業生のお言葉に励まされましたことは本当に有難いことでございました。
新入生:この決定が1年前でなくて良かった。昨年だったら入学できなかった。
在学生:最後まで、懸命に存分に恵泉の学びを吸収します。こんなこと人生でめったに経験できることではない。今年の新入生に後輩がいないのであれば、その分、私たちが可愛がります。
卒業生:母校は建物・土地ではありません。先生方、職員の皆様に大切にされながら学んだ恵泉教育は、私の心と身体の中にしっかりと沁みついていて、消えることはありません。後輩たちのことはできうる限り応援します。
4月当初、学生や卒業生の方々から、こうした声をいくつもいただきました。
そして始まった春学期以降、学生たちは懸命に学びを続けております。先輩や上級生たちは「生涯就業力STEP授業」をはじめとしていろいろな場面に登壇し、さまざまに貴重なメッセージを贈ってくださっています。
今、学内では恵泉祭が開催されています。今年、学生たちが恵泉祭に選んだタイトルは「想う」です。「残り数年となったこのキャンパスでの学びですが、ここで培った『想い』は、これまでも、これからも変わりません。先輩方が学ばれ、社会で活躍されていることを『想い』、そこに通貫している河井道先生の『想い』をしっかり受けついでいきます」。恵泉祭実行委員長の開会宣言の言葉でした。
学生・卒業生に恵まれていることの有難さは言葉に尽くせません。教職員は限られた時間、残された時間にできうる限り恵泉教育をお嬢様方にお伝えさせていただくことを心に誓っていることは言うまでもありません。学園本部は学生ファーストの教育に専念できるよう、最後の年度まで教職員の雇用を保障するという決定を先般の理事会でしてくれました。
本学の閉校は大きなニュースとしてとりあげられ、驚きの声と共にさまざまなメッセージをいただきました。
立教大学総長・キリスト教学校教育同盟理事長がいち早く出してくださったメッセージは、 3月の大学説明会でもご紹介させていただいた通りです。
恵泉女学園大学は、創立者である河井道先生の精神を根本原理とし、きわめて良質な教育をテーラーメイドで施している、日本の高等教育においても稀有な存在です。今回の決定はもちろん苦渋の末だと思いますが、恵泉が大切にしてこられた理念を、今後も、全国のキリスト教大学全体で継承していきたいと思います。
また『選択』(3万人のための情報誌)2023年6月号には、「恵泉女学園大学廃校で表出した『社会的危機』と題した記事が掲載されました。
*本誌の記事のすべては無記名記事となっており、執筆者がどなたかは分かりませんが、恵泉女学園大学のことを非常によく精査されていました。なお、私は本誌をはじめとして、メディアの取材はこれまで一切お受けしておりません。学生・卒業生・保証人の皆様に向けてご説明を尽くすことを第一とさせていただきたく、私の発言・ご説明は学生・卒業生・保証人の皆様に向けて直接ないしは大学HP限りとさせていただいております。
この『選択』には、「恵泉の事例は一つの女子大の失敗ではなく、より大きな社会矛盾が大学現場に表出したとみるべきだ」と書かれております。
通常、急速な少子化と女性活躍推進の中で女子大の意義が衰退したことが原因だとする指摘が大方となっている中、『選択』は、女子大の意義はけっして衰退していない。むしろ、今こそ大きいとし、その根拠に競争に勝ち抜くという視点偏重の社会の中で、弱者への視線を持つ人材育成の大切さがあり、それが認められにくくなっているところにこそ、日本社会の病理があると指摘しています。「恵泉女学園大学廃校で表出した『社会的危機』とするタイトルを掲げた本記事は、河井道先生以来、恵泉が大切にしてきた理念の意義、そこに挑んできた恵泉女学園大学の存在意義を認めてくださっています。
今から90数年前に、世界平和構築に尽くす自立した女性の育成にかけた河井先生のお心を女子高等教育機関として継承することを目指した本学ですが、それを募集停止という形で閉じざるを得ないことは無念のほかありません。
しかし、今、私たちには本学の志を理解し、信頼し、学び続けている学生を与えられています。
女性活躍が各方面で言われている今日、「汝の光を輝かせ」と言われた河井先生のお言葉を確かに継承発展させることを残された期間ではありますが、使命とさせていただきます。
これから求められる真の女性活躍は、けっして人を押しのけて、勝つことをめざす競争的なリーダーではありません。いつ、何があってもまず自分を大切にすることを忘れずに。自分の弱さも大切さも知りつくした人として、他者のかけがえのなさを尊重し、共に助け合い、分かち合うことのできる、謙虚さと他者への思いやりに充ちた力。この力を生涯にわたって育む努力を惜しまず、身近な大切な人、地域や社会に尽くすことに喜びを見出す力となる「生涯就業力」を、お嬢様方にしっかりと伝えさせていただきます。それがお嬢様がこの先の長い人生を豊かに生きる力となることを信じております。
この後、それをどのように学びの仕組みとし、学生生活の充実につなげ、社会にはばたいていく就職支援としているかについて、各委員長から詳しくご説明をさせていただきます。
今後ともどうか本学の教育にご理解とお力添えを賜りますよう、お願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。