"本当にそうかな?" "はて?" ~第40回ATP受賞式に出席して~

2024年09月02日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

9月に入りました。盛夏のときほどではありませんが、依然として暑さは続いております。
今夏は炎暑に加えて、地震や台風などの自然災害にも不安を募らせざるを得ない日が少なくありませんでした。
ここ数日も大型台風による被害が各地で続いております。被害に遭われた皆さまに心からお見舞いを申し上げます。

本ブログは8月中旬から2回程、お休みをいただいておりました。
大学はまだ夏季休暇中で、秋学期は9月23日から始まりますが、来週は9月卒業式が執り行われる予定です。順次、多摩キャンパスの様子についてご報告いたします。

本日はお休みをいただいております間に心に残ったことの一つとして、「第40回ATP賞テレビグランプリ」受賞式(2024年8月8日 @東京プリンスホテル)に出席した折のことについて、書かせていただきます。

この賞は「授賞」ではなく「受賞」という言葉を用いています。「製作会社の社会的機能を高め、制作スタッフ一人ひとりの情熱や気概に応えるために、創り手である製作会社のプロデューサーやディレクターが自ら審査委員となって優れた作品を選ぶ、日本で唯一の賞」(一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟HPより)との思いからです。つまり、"創り手が選ぶ創り手のための賞"で、ドラマ部門、ドキュメンタリー部門、情報・バラエティ部門の3つのジャンルで作品を募集し、毎年200本近い応募作品の中から、グランプリ、最優秀賞、優秀賞などが選ばれています。

1984年に創設されて、40回目となる今回のグランプリを受賞したのは「不適切にもほどがある!」(TBSスパークル/TBS)でした。
脚本家の宮藤官九郎氏が、番組プロデューサーや監督と共に登壇して挨拶をされましたが、その中で次のような言葉がありました。

「小川市郎(阿部サダヲ氏演じる主人公)には、いくつか決まり文句というか、口癖があって、それが話題となりました。その中で一番たくさん言っていたのが、"本当にそうかな?"って言葉なんです」。そして、「たとえば、今はコンプライアンスが厳しいからテレビドラマを創るのは大変だといわれてますけど、"本当にそうかな?"って思うんです。いろいろ工夫すれば、まだまだやりたいことはできるし、面白くできるんじゃないかな?って。"本当にそうかな?" が、僕がなにかを創るときの原点なんです(私の手元のメモで、正確な表現ではないかもしれませんが・・・)と、続けられました。

また最優秀新人賞は『レギュラー番組への道 危険なささやき』(NHKエデュケーショナル/NHK 総合)を演出した冨田玲央氏(パオネットワーク)が受賞しました。
この番組は、「なぜ、人は違法な勧誘に心を奪われるのか。危険なささやきに冷静さを失うのか。その時の心のメカニズムを実際のある裁判の記録を元に再現劇と心理学分析から解き明かした」番組です(NHK HPより)。俳優の田畑智子氏が危険なささやきに出会ったときの心の動きや葛藤を熱演しました。

私たちの日常には、ふとした瞬間に心の隙間に入り込んでくる"危険なささやき"があることでしょう。とりわけ昨今はSNS等で、さまざまな情報に触れるのが当たり前の日常となっています。
「はたして、そこに危険性はないのか? ただそのまま受け入れ、流されてしまっていいのか?」と、立ち止まって考える習慣が必要です。
そのためにも、前述の宮藤官九郎氏がいう"本当にそうかな?"を口癖にできたらと思いました。
そういえば、 今、話題のNHK朝の連続ドラマ『虎に翼』(日本最初の女性弁護士で、後に裁判官となった三淵嘉子氏をモデルとしたドラマ)の主人公(伊藤沙莉氏主演)の口癖も、"はて?"です。

"本当にそうかな?" "はて?"・・・。昨今の風潮にあって、大切なつぶやきであることを、改めて考えさせられました。

(引用元:一般社団法人 全日本テレビ番組製作社連盟HP)

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