新年のご挨拶
2025年01月01日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
あけましておめでとうございます。新年、いかがお迎えでいらっしゃいますか?
昨年は元旦の日に能登半島が大地震に見舞われ、日本中が震撼させられた年明けでした。
世界に目を転じれば、いくつもの国と地域で、戦争、虐殺、飢餓が繰り広げられた年でした。
自然現象を前にした無力さ、人間どうしが争い、命が無差別に奪われていく惨状に、胸つぶれる思いで過ごした一年でした。
新しい年は、穏やかで、どうか平和を取り戻せる年であってほしい、と心から願います。
三浦綾子さんの詩集を紐解いていたとき、こんな一節が目に入ってきました。
三浦綾子さんは、肺結核や脊椎カリエスなど、いくつもの重い病を得ながらも、キリスト教信仰に基づいて、人間のありかたを問う小説やエッセイを数多く残された方です。
厳しい試練の中に置かれてなお、感謝を忘れない心をいかに持ち続けるか、私たちが己の無力さと人としての業の深さから少しでも解き放たれる道がそこにあるように思います。
そして、もう一つ。昨年末に観た映画『侍タイムスリッパー』も心に深く残っています。
江戸時代の会津藩士の侍が雷に打たれて気を失い、現代にタイプスリップして、時代劇で斬られ役として生きていくという話です。エンターテイメントならではの荒唐無稽なストーリーですが、スクリーンにエンドロールが流れても、ほとんどの観客が立ち上がらず、最後まで鑑賞の余韻にひたる姿がどちらの上映館でも見られたとのことです。
この映画は安田淳一監督が私財を投げうち、ご自身が脚本・原作など一人11役を務めて製作したオリジナル作品です。はじめは一映画館の上映で終わる予定だったところ、観客の口コミで、全国300館以上で上映されるまでになった話題作です。
これ以上ないほどの環境の激変に見舞われながらも、己の信じるところを捨てず、一方、目の前のことに、しなやかに強か(したたか)に立ち向かっていく主人公の姿に胸打たれます。
悩みと苦しみ、不安の多い日々にあっても、小さな感動を大切に、感謝の心を忘れずに影日向なく丁寧に生きようとする主人公の姿は、前述の三浦綾子さんの言葉にも通じるものを感じました。
最近、「神の沈黙が、耐え難く、かなしい」と嘆く声を聞くことが増えました。自然災害を前にして、また平和が無残に砕かれる様を目の当たりにして、その苦しさが言わせる言葉かと思います。
人間の無力さにいたたまれない思いです。しかし、そうであればこそ、神の沈黙を嘆くだけでなく、私たち一人ひとりが、日々、感謝をもって、丁寧に、真摯に生きていく強さを持てたらとも思います。その強さが、この一年を少しでも明るく切り開いていける力となることを願いつつ、年頭のご挨拶とさせていただきます。
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