祝成人!

2025年01月13日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

成人の日を迎えた学生のあなたへ

今日は成人の日。新社会人としてのスタートを切る日ですね。
おめでとうございます!

もっとも、おめでとうと言われても、うれしいよりも、戸惑いの気持ちのほうが大きいかもしれません。"まだ学生の身分で、社会人になる実感もあまりない。この先、どう生きたらいいの? 自分に何ができるの? そもそも、自分には心からこれをしたいと言えるものがまだ見つかっていない・・・。"
先が見えていない自分に、新社会人としてのスタートを切るなんて荷が重すぎます・・・"。 近年、こういう声を若い人から聞くことが少なくありません。

でも、それでいいのです! 
若いあなたが自信に満ち溢れているほうが、私は心配です。
新しい一歩を踏み出そうとするときに、不安と恐れを覚えたら、それはあなたが浮足立っていないということです。現実の厳しさがはっきり見えているということです。ご自分のこれからの時間を真剣に考えようとしているからです。
あなたが謙虚にひたむきに生きようとしているからこその戸惑いなのです。
どうかご自分の謙虚さをおおらかに受け入れてください。

成人としてのこれからの時間は、何かに取り組んだとしても、そんなに、すぐに、そして、明確な結果は得られにくいことでしょう。
自分が好きなことも、そんなに簡単に見つかるものではないと、私自身をふりかえって思います。むしろ、平凡な時間を積み重ねているだけと思う日が続くことが少なくありません。

それでも、与えられたもの、出会った目の前のできごとに、焦らず、あきらめずに全力を投じ続けてほしいのです。地道に取り組んだ時間と努力は、あなたを裏切りません。成果を急がないことです。失敗を恐れないことです。
遠回りも失敗も、必要なことです。人生に無駄なものはありません。

もっとも、自分にあっていないと思ったら、別の道を探すことに躊躇しなくて良いとも思います。方針を変えることが必要なことも、人生にはたくさんあります。
ただし、目先の成果や人の目、評価に揺れることだけは、厳に戒めて!
あなたらしい生き方を手に入れることに、無駄な時間を費やすだけです。

友人知人の輝きに焦りとさみしさを覚えることも少なくないかもしれません。そんなときは、素直に、おめでとうと言える勇気を持ちましょう。
仮に友人知人が先に輝いて見えたとしても、それであなたの輝きが曇るわけではありません。赤ちゃんのおむつ外しの時期が他の赤ちゃんと比べて数か月遅いことを気に病むことに等しいくらい、ナンセンスなことです。
あなたの輝きは、必ずあなたにふさわしい出番を待っているはずです。

そのためにも、岐路に立ったと感じたときは、新しい自分の道を見つけるチャンスと思って、奮い立ちましょう。
ただし、どちらを選ぶかの選択は、あくまでもあなた自身の感性と思考で決めることだけは、忘れないでください。

成人としての日々は、岐路に立たされるという思いに幾度も出会う日々でもあります。成人として生きる重みと苦しさは、ここにあると言っても過言ではありませんが、それがあるから成長できるのです。自分でしっかり迷うこと。迷うことを恐れず、戸惑うことにも耐える力をつけていく。そうして、苦しさ以上に、生きる喜びと醍醐味を味わえるのもまた、成人としての道です。

いつしか、あなたが本当にあなたらしい輝きを手にいれてくれることを信じています。成人の日、おめでとうございます!

昨年秋の「恵泉祭2024~輝く」の実行委員の皆様と
(写真提供 アートスタジオスズキ 「学長の部屋」2024.11.25再録)